第七十六話
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「華々しくないとは…あれですか?ユカリさんの手料理がひどく不味く、口に入れるのもはばかられるほどなのに、自分の口からは言い出せないヘタレな主人公のような状況とか?」
「それはそれで美味しいシチュエーションでしょう。それに彼女の料理のレベルは既に三ツ星レストランを超える領域です。あの料理が食べられるなら、私は寒空の下での監視にも精が出ると言うもの」
この時馨は思った。この男、すでにユカリに胃袋を掌握されている、と。
これは面白い事になりそうだ、とも。
「では何がそんなに不都合なんですか?」
「まつろわぬ神と同席しての食事なのですよ?気の休まる所が有りません」
「なるほど。アテナの威厳に萎縮してしまっている、と」
「ええ。まぁ、最近のアテナはどうにもユカリさんに懐いたのか、単に餌付けされたのか、態度が柔らかくなってきてはいますがね。恋愛シミュレーションなら無表情期が終わり弱デレ期に差し掛かったと言う所ですね。この傾向を持つキャラは総じて幼児体型、ソプラノボイスと言った感じのキャラ設定に多いのですが、まさにアテナはハマリ役ですな」
それは見ていて微笑ましいと甘粕は言った。
「ほうほう、それは後で詳しく聞きたいね。…しかし、今は報告を聞こうか」
さてさて、バカ話もここまでと馨の表情が真剣な物に変わる。
「最初からそうしてくださいよ」
と、愚痴を言ってから甘粕も話し始める。
「デヤンスタール・ヴォバン侯爵が来日されたと言う情報が入りました」
それを聞いて馨の表情はさらに険を増す。
「目的はなんだろうね?」
「かの御人は血気盛んな性格だと伺った事がありますな」
「まつろわぬアテナかい?だが、それは情報を改ざんし、草薙護堂によって放逐されたと流布したはずだけど」
「ですな。しかし、可能性は0では有りません。今のところ一番可能性が高いのはまつろわぬアテナとの闘争。後の事はまだ分かりかねます」
馨は面白そうに口角をあげる。
「最近はこの国も物騒になってきたものだね」
「楽しそうに言わないでいただきたい」
「はは、ごめんよ。しかし、これはどうした物か。アテナと坂上紫には報告した方がいいのかな?」
「それがよろしいでしょうな。アテナはユカリさんがいる限りこの国で自ら戦いにおもむく可能性は低いでしょう。とは言え、ヴォバン侯爵がアテナに襲い掛かればその範疇では無いでしょうが…」
「その時はその時に考えようか。まつろわぬ神とカンピオーネを制御できるなんて傲慢な事は言える立場じゃないしね、僕たちも。それにアテナが討たれればそれはそれで僕たちの案件が一つ減ると言うもの」
「…ですな。…では、今晩それとなくお二方に注意をしてきましょう」
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