暁 〜小説投稿サイト〜
レンズ越しのセイレーン
Mission
Mission6 パンドラ
(1) ニ・アケリア村(分史)
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 思い出の中の泣き虫少年と、いかにも「その筋」といった風体の男を、頭の中で連続させるのは難しかった。それでも、ずっと死んだと思っていた幼なじみが生きていて、再会できたことは感慨深かった。

「では見事正解したユリウス氏に賞品を進呈しましょう」

 ユティが差し出したのは、写真屋で現像のおまけに付く紙のアルバム。

「ルドガーの活動記録。見られないようにまとめるの大変だった。ちょっとしたストーカー気分」

 紙のアルバムを開くと、ルドガーの家事をする姿や、ユリウスの知らない顔ぶれと笑い合う姿を写した写真が何十枚も綴じてあった。しかも全てにメモがあり、日付や、一緒に写る相手の身分、シチュエーションまで細かく記してある。

「すごいな……将来、私立探偵になれるんじゃないか?」
「ならないもん」
「これ全部、ルドガーや周りの人間に気づかれずに撮ったのか」
「全部じゃない。ワタシがカメラを持つのは自然なこと。いきなり撮ってもみんな気にしなくなった。その辺を利用して撮りまくった。家空けてる間に弟くんに出来た新しいオトモダチ、お兄ちゃんは気になると思って」
「……ご深慮痛み入るよ。帰ってゆっくり見させてもらう」

 ユリウスはアルバムをコートの内ポケットに入れた。ちょうどよく入るサイズ。ユリウスが持ち歩くのさえ考慮してユティはアルバムを編集したのだろうか。

「何故君は俺とアルフレドの過去の交友関係を知っていたんだ」
「黙秘」

 軽い気持ちでの問いだったので、ぴしゃっと返されても溜息一つしか出なかった。

「他の友人も把握しているのか」
「ノー。ワタシが知ってるのはアルフレドとバランだけ」

 尋問みたいだ。ユリウスは久方ぶりに愉快な気分を味わった。彼女ばかりが情報量で勝っている状況を覆せば、この能面はどう崩れるだろう。どこまで聞き出せるか試してやる。

「俺の両親については知っているか」
「イエス」
「俺とルドガーの兄弟関係も?」
「イエス」
「知ったのは独力か。それとも協力者がいるのか」
「後者」
「複数か」
「イエス。3人いた」
「その3人は俺の知る人物か」
「イエス。全員アナタと関わりが深い人物」
「質問の角度を変える。親兄弟、友人、それ以外で君が俺について知っている事柄はあるか」
「イエス。年齢、住所、趣味、学歴、職歴。好きな食べ物、好きな動物。ハイレベルの骸殻の秘密。時歪の因子(タイムファクター)化の『進行具合』」

 抜刀した。
 冗談抜きで今のユリウスにはユースティア・レイシィへの敵意しかない。未知の敵を目の前にした時の緊張感。
 双剣をユティに向けて隙なく構える。だが、ユティは能面のままだ。

「契約違反。ワタシが『目的の場面に
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