Mission
Mission6 パンドラ
(1) ニ・アケリア村(分史)
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力も失せた。ユリウスはユティを引き剥がすと、アルヴィン、と呼ばれた男に押しつけて立ち上がった。
「君たちの連れだろう。後は任せた。俺には面倒見きれない」
「え、ちょ、おい、待てって。どこ行くんだよ」
「弟を探しに行く」
ぽかんとするエルとアルヴィンに背を向け、ユリウスは歩き出そうとした。
「待って」
足を止めてふり返る。アルヴィンの腕に支えられたユティが、まっすぐユリウスを見ていた。
「行く前に、話、したい。ルドガーのこと、今までのこと」
先ほどの暴挙などなかったように、ユティはユリウスの知るユースティア・レイシィに戻っていた。
「……いいだろう」
「というわけだから、行ってくる。アルフレド、エルとローエンをお願い」
「お、おう。なんかあったらすぐ呼べよ」
「うん」
ユティに付いて人気のないスポットまで行く。ほぼ盗み聞きされまいという距離を経て、ユティは止まってユリウスをふり返った。
「それではここでクエスチョン」
「は?」
「『泣き虫アル坊や』『スヴェント本家長男』『証の歌を唄ってあげた』。これらのキーワードで誰かを思い出しませんか?」
バラエティ番組の前置きじみた台詞に続いたのは、正真正銘のクイズだった。
突如始まったお遊びにユリウスは閉口した。下らない遊びをしてないで早く二人きりになった意図を教えろ、と詰め寄ってもいいのだが、この少女はそれでも動じない気がした。
しかたなくユリウスはユティのクイズの正解になりうる人物を記憶の中で探してみたが。
「……お手上げだ。分からない」
「そう? じゃあ特別ヒント。――彼からのアナタの呼び名は『ユリ兄』」
ユティが指さす先には、たまたまこちらの次元に出た際に一緒だった、アルヴィンという男。
――“ユリ兄! またうたってよ、あの子守唄”――
ぱちん、と弾けた幼い日のシャボン玉。
「アル…フレド…」
まだユリウスが実家に暮らしていた頃、近所に貴族のスヴェント家の屋敷もあった。そこの嫡男とは歳も近く、バランも交えて遊んでいた。まだ足が悪かったバランが首謀者になり、ユリウスとアルフレドが実行犯をしてイタズラをしたりもした。
――すでに分史破壊任務に就いていた幼いユリウスには、彼らと遊べる時間は、童心でいられる貴重な時間だった。
「だーいせーかーい」
くるくるくるー。下手なバレエを踊るユティ。
「スヴェント家は全員が、ジルニトラ号漂流事件のせいで行方不明なんじゃなかったのか」
「ジルニトラの行き先はリーゼ・マクシア。生きてエレンピオスに帰れたのは、アルフレド一人だけだけど」
「漂流難民になってたのか……」
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