Mission
Mission6 パンドラ
(1) ニ・アケリア村(分史)
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ユリウスは夢を見ている。遠い昔の、たいせつな、たいせつな思い出。
――“おかえりなさい、兄さんっ”――
――“その…言いつけ破ってごめんなさいっ。でも、兄さん、ずっと食べてないみたいだったから、心配で…”――
――“ま、まずくない? 初めて作ったから。まずかったら言ってね。残していいんだかねっ”――
ユリウス・ウィル・クルスニクの人生の方向を決定づけた、人からすれば何でもない、小さな出来事。
この幸せに浸っていたい。自分たち兄弟がいる部屋だけが世界で、希望だけを信じられた時間にもっといたい。
だが、ユリウスの願い虚しく、彼の意識は現実の覚醒へと向かって行った。
次元の壁を越えて一番に目を覚ましたのはユリウスだった。
ユリウスは自身の骸殻が消えているのに気づいた。意識を失ったことで自動的に解除されたらしい。
傷む体の節々は無視して、ユリウスは周囲の状況を確認する。
どうやらここはいわゆる「村」というコミュニティらしい。ユリウスも実際に見るのは初めてだ。村人たちは、突然現れた身なりのそぐわない自分たちを、遠巻きにじろじろ観察している。
次に手近なところを見回してみる。エルをしっかと抱きしめて気絶しているユティ。それぞれに仰臥する若い男と老人。
後者には義理もないので放ってルドガーを探しに行こうか。しかし口頭とはいえユティだけは雇用契約を交わした仲。ルドガーのサポートを続けてもらうためにも、彼女とのそれは続行したい。
ユリウスは少女たちに近づくと、ユティの頬を軽く叩いた。
「ユティ。おい、ユティ。起きなさい」
「ん…とー、さま?」
ユティのとろんとした眼がユリウスを捉える。寝ぼけて父親と間違えているらしい。訂正しようとして。
「とーさまだぁ」
極上の笑みを浮かべるユティにすり寄られた。
振り解けない。ユリウスは彼にしては珍しく本気で混乱して硬直していた。
今のユティは完全に無防備だ。ただの甘えん坊の女の子だ。100以上の分史を壊してきたクラウンエージェントも、生身の女子の対処法には疎かった。
「ああーーーー!!」
完全なる不意打ち。いつのまにか目を覚ましたエルが、ユリウスを指さして騒ぎ出した。
「おじさんがユティとフテキセツなカンケーになってる!!」
「なにぃ!?」
すわっ。飛び起きたのはブランドのスーツを着崩した若い男。
「わ、アルヴィン起きた」
「そりゃお兄さんだってあの子心配だからね!」
「お〜、ホゴシャっぽいっ」
「あと元幼なじみと今の仲間が不適切な関係とかイヤすぎるにも程がある!」
もうここまで来るとツッコミを入れる気
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