甦りし記憶
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彼はそれに気付いた。だが遅かった。間に合わなかった。
しかしその側に三影がいた。彼は咄嗟に村雨を庇った。
「逃げろ!」
爆発が二人を襲った。爆風が去った時二人はその場に倒れ伏していた。
「馬鹿者が!」
怒り狂ったマシーン大元帥はその戦闘員を額のビームで貫いた。そして村雨達の方を見る。
二人は動かない。その身体は明らかに致命傷を受けていた。
その時村雨はまだかろうじて意識があった。だが薄れいく意識の中で何かを叫ぶ声を聞いたのが最後の記憶であった。
「ア、ア、ア・・・・・・」
槍を脳に突き立てられた村雨は呻き続けている。そして何かを必死に叫ぼうとしていた。
「フフフ、どうやら戻ってきたようですね」
その槍を手にするヤマアラシロイドはそれを見てニヤリ、と笑った。
「記憶が一度に戻るとどうなるか。それは激しいショックです」
彼は笑ったまま言った。
「そのショックにより自我が崩壊する。そうなれば再び我等が許に戻ってきます」
「悪魔め・・・・・・」
伊藤博士は彼を睨み付けて呻く様に言った。
「悪魔!?それは違いますね」
彼はその言葉に対してうそぶいた。
「我々は神の使徒なのですよ。世界を新たに統べる偉大な神のね」
「言うな、人の命を弄んでいておいて何が神だ」
伊藤博士は反論した。
「おや、何もご存知ないようで」
ヤマアラシロイドは博士へ顔を向けて言った。
「神とは本来そうしたものではないのですか?」
血の凍る様な冷たい笑みを浮かべて言った。
「かって洪水を起こし人間達を滅ぼしたあの神も雷を落とす神も。神とは人を超越した力で人を支配するものなのです」
「それは貴様が勝手にそう思い込んでいるだけだ」
「やれやれ、その言葉は貴方にお返し致しましょう。甘いお考えだ」
彼はそう言うと村雨へ顔を戻した。
「もういいでしょう」
槍を抜いた。
槍には血糊も脳漿も付いてはいなかった。ただ豆腐か何かから引き抜く様に抜けた。
村雨は何も語らない。ただその場にうずくまっている。
束縛が解かれた。ヤマアラシロイドは彼に語り掛けた。
「さて、ゼクロスよ」
答えはない。
「我等が同志よ」
それでも語り掛ける。
「立ちなさい。そして我等と共に来るのです」
彼は立ち上がった。顔は俯けまるで操り人形の様な動きであった。
「村雨君・・・・・・」
博士はそれを見て絶望の声を出した。
「貴方は我がバダンに選ばれた者。我等の理想の為にその力を捧げるのです」
「・・・・・・・・・」
彼は無言で前に出た。そしてヤマアラシロイドの方へゆっくりと歩いていく。
「来なさい、同志よ。我等の下へ」
村雨はその言葉に従うかのように歩いていく。そしてヤマアラシロイドの前に来た。
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