記憶の欠片
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「イエスかノーか。勿論どう答えればいいかはご存知ですね」
「・・・・・・ああ」
村雨は無表情のまま答えた。
「ならば話が早い。バダンへ戻りますか」
「・・・・・・ノーだ」
村雨は静かに言った。
「今何と!?」
ヤマアラシロイドはその言葉に対して眉をピクリ、と上げた。
「聞こえなかったか。ノー、と言ったのだ」
村雨は再び言った。
「俺は今まで人を見てきてわかった。人は確かに問題も多くあるがそれ以上に素晴らしいものを持っている。俺が今持っていないものを持っている。俺はそれを守りたい」
「・・・・・・・・・」
ヤマアラシロイドは動かない。黙してその話を聞いている。
「俺はその為に戦う。そして貴様等がそれを脅かそうとするのなら俺は貴様等と戦う」
「・・・・・・・・・そうですか」
話を聞き終えるとヤマアラシロイドは静かに俯いた。
「ならば再改造が必要ですね。二度と感情というつまらないものが戻って来ないような」
その目が赤くなった。髪が逆立ち銀色のトゲとなる。顔が獣のものになるその全身が黒と緑に覆われる。
「このヤマアラシロイドがそれを奪って差し上げましょう。そして貴方を我等の兵器に戻してあげます」
怪人となった。それは禍々しいトゲの男であった。
「ムウ・・・・・・」
村雨はそれを見て身構えた。その周りを戦闘員達が取り囲む。
「クソッ、何時の間に・・・・・・」
博士はそれを見て呻いた。
「博士は放っておきなさい」
ヤマアラシロイドは戦闘員達に命令した。
「かねてからの作戦通りいきますよ、いいですね」
戦闘員達はそれに頷いた。そして槍やロープを手に村雨を取り囲んだ。
「さて、ゼクロス」
ヤマアラシロイドは背中から一本のトゲを引き抜いた。
「これから貴方にいいものを差し上げます」
そう言うとトゲをかざした。それは鋭い槍に変化した。
「何だ、それは」
村雨は身構えながら問うた。
「貴方が望んでいたものですよ」
そう言うとニイイ、と笑った。牙の如き歯が見える。
「遠慮なく受け取って下さい」
博士はその言葉を聞いてハッとした。
「ま、まさか・・・・・・」
顔が急激に蒼ざめていく。
「おや、どうなされました」
ヤマアラシロイドはその博士を見て笑った。
「まさか貴様・・・・・・」
声が震えていた。
「そのまさかですよ」
彼は口を耳まで裂けさせて笑いつつ言った。
「止めろ!彼を何だと思っている!」
博士は彼を睨み付けて叫んだ。
「同志ですよ」
ヤマアラシロイドは馬鹿にしたような声で言った。
「心の無い、ね」
それが全てであった。彼等にとって村雨は所詮そうでしかないのだ。
「やはり貴様等は・・・・・・」
博士は激しい怒りと憎悪の目を向
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