記憶の欠片
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て尋ねた。
「悪くないな」
村雨は素っ気無く答えた。
「そうか、ならいい」
三影はそれを聞いて満足そうに笑った。
「ところでここに何をしに来ている」
村雨はサングラスを外すと三影に対して問うた。
「聞きたいか」
彼は再びニヤリ、と笑った。
「まあいい。どのみち話すつもりだったしな」
二人はアメリカ軍のベースの前を右に曲がった。そしてそこから歩き人気の無い海岸まで行った。
「ここならいいな」
三影は村雨のほうを振り向いて言った。
「闘うつもりか?」
村雨は彼を見据えて言った。
「闘いか。それもいいな」
彼はニヤリ、と笑って言った。
「・・・・・・・・・」
村雨は構えを取った。全身に緊張が走る。
「安心しろ。今は御前と闘うつもりは無い」
彼は不敵な笑みを浮かべたまま言った。
「それよりも御前に尋ねたい事がある。今日はその為に来た」
「俺に・・・・・・!?」
村雨はその言葉にキョトンとした。
「そうだ。俺の事を憶えているか」
彼は口元から笑みを消して尋ねてきた。
「いや、思い出してか、と聞いた方がいいな」
そう言うと彼はサングラスを取り外した。
「この右目のことだがな」
彼はその機械の目を見せて言った。
「その眼は・・・・・・」
感情の無い銀色の眼。その眼が村雨を見ていた。
「思い出しているか、そうでないのか。どちらだ?」
彼は尋ねてきた。
「それは・・・・・・・・・」
村雨は答えられなかった。脳裏に何も浮かんで来ないのだ。
「そうか。まだ思い出してはいないのか」
彼は舌打ち気味にそう言うと再びサングラスをかけた。
「それでは仕方がない。この眼はな、訓練の時に失ったのだ。御前と一緒の訓練の時にな」
「俺と・・・・・・」
「そうだ。あれは御前がバダンにいた時だった」
彼は煙草を取り出した。そしてそれに火を点けながら言った。
「俺と御前はバダンの幹部候補生だった。そして共に訓練を受けていたのだ」
「バダンの・・・・・・」
その時脳裏に何かが浮かんで来た。
「あ・・・・・・・・・」
それを見て村雨は呻いた。
「何か思い出したか?」
「これは・・・・・・・・・」
それは荒地だった。そこで彼は軍服を着た者達と共に激しい訓練を受けていた。
爆発が起こり銃弾が飛び交う。それはまるで戦場であった。
その横に彼がいた。彼もまた軍服であった。
「御前あの時の・・・・・・」
村雨は三影の顔を見て言った。
「そうだ。俺はあの時御前と共に訓練を受けていた」
彼は煙草から口を離して言った。
「あの時御前は爆発に巻き込まれた。俺はそれを助けようとしてこの右眼を失ったのだ」
彼はサングラスの右に手を当てて言った。
「御前は一命を
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