失われた記憶
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見える広い部屋だった。広いベッドやソファーが置かれ下には絨毯が敷かれている。テレビもある。
「いい部屋だな」
その時博士がやって来た。
「そう言うと思ったよ。もっとも君が以前使っていた部屋だが」
「そうか、俺はこの部屋にいたのか」
「うん、それも思い出していけばいいよ」
博士は彼に対して言った。
「とりあえず私の連絡先を教えておこうか」
彼はそう言うと携帯を取り出した。
「これだ。覚えておいてくれ」
「わかった」
村雨は彼の番号を自分の携帯に記憶させた。
「よし。では私はこれで。また何かあったら連絡してくれ」
「ああ」
博士は屋敷を後にした。後には村雨一人が残った。
「中を見回ってみるか」
彼はふと部屋を出た。そして屋敷の中を見回った。
古風ながら上品な造りの屋敷である。装飾品は無いが住むのに必要なものは全て揃っている。
「中々いい家だな」
彼は屋敷の中を見終わり言った。そして応接間のソファーに腰を落とした。
そして紅茶を入れる。口をつけ飲む。
「・・・・・・何処かでこんなことがあったかな」
ふと脳裏に何かが浮かんだ。彼はその時も紅茶を飲んでいた。
だがその時は一人ではなかった。その茶も自分ではない別の誰かが入れてくれたのだ。
「誰だったかな」
それは女性だった気がする。それも自分と親しい者だ。だがそれが誰かまではわからない。
ティーカップを見る。見ればそれと同じものが棚に入っている。
「二つ、か」
それは二人で使っていた。それも同じ女性だった筈だ。
「俺には姉さんがいたというが」
村雨はふと考えた。
「その人なのか」
名前はしずかというらしい。それは覚えた。
懐から一枚の写真を取り出した。博士達から貰った写真だ。
そこに自分と姉が写っている。二人共笑顔で写っている。
黒い髪の美しい女性だ。自分と並んで立っている。
「これが俺の姉さんか」
それはわかった。だが実感が無い。
「わからない。俺は本当にこの人と一緒にいたのか」
写真を見ながら呟いた。感覚が湧かない。
「姉さんか」
一体どういう人だったのかさえもわからない。それが残念だとも思わなかった。
「それも俺の感情がまだ完全ではないせいか」
村雨はふと思った。
「姉さん、貴女はどういう人だったんだ」
再び写真の中の姉を見る。彼女は何も語らずただ微笑んでいるだけである。
「あそこか」
その村雨がいる洋館を一人の男が遠く離れた崖の上から見ていた。
「かってはあいつの家だったらしいが」
黒いジャケットの男である。三影だった。
「記憶を取り戻そうとしているようだな。無駄な事を」
そう言うとサングラスを取り外した。そして機械の右目でその屋敷を見る。
機械の
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