失われた記憶
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海堂博士は彼に言った。
「しかし全てを思い出しても決して悲しみや怒りに心を奪われないでくれ」
ここで伊藤博士が言った。
「悲しみ、怒り・・・・・・。伊藤博士、何故だ!?何故俺に記憶の話をする時いつもその言葉を出す!?」
彼は尋ねた。
「それはいずれわかるよ。いずれ、ね」
伊藤博士は悲しい顔で言った。
「けれどこれだけは覚えてくれ」
そう言うと言葉を続ける
「前にも言ったがライダー達は皆最初は憎しみを心に抱いて戦ってきた。しかしそれを乗り越えて本当の意味での正義の為、人々の為に戦う戦士になったんだ」
「本当の意味、でか」
「そう、それもわかるだろう。君はそれを理解する宿命なんだ」
「宿命・・・・・・俺の宿命・・・・・・」
「宿命からは決して逃げられない。いや、君は逃げる事を許されていないんだ」
「それは俺が改造人間だからか。ゼクロスだからか」
「・・・・・・・・・そうだ」
伊藤博士は顔を下に向けながらも毅然とした声で言った。
「君はバダンに兵器として改造された。そしてそのバダンから脱出してここまで来た。それも宿命なんだ」
「ここに来ているのもか」
「そうだ、辛い事を言っているのはわかっている。だがそれが君の歩むべき道なんだ」
博士は顔を上げた。
「バダンと戦う事がか。それが俺の宿命だというのか」
村雨の表情は変わらない。だがその声は次第に重くなっていく。
「残念だが。そして君が望まなくとも彼等は必ずやって来るだろう。君を連れ戻しに」
「俺を・・・・・・」
「もう一度兵器となるか、人間になるか。もし君が兵器となりたいのなら彼等に従えばいい」
「おい、伊藤君・・・・・・」
海堂博士と志度博士はその発言を咎めようとした。
「だがそれが是が非かは君自身が最もよくわかっている筈だ。私とここまで来た旅で」
「・・・・・・・・・」
村雨はそれを聞いて沈黙した。確かにここまでの道で多くの事があった。そして多くの事を知った。
「もしそれが惜しくないというのならそうしたまえ。だがそれがどういうことか君はもうわかっている」
「・・・・・・ああ」
村雨はそれに対し答えた。
「ならば君は自分がどうすべきかわかっているな。ゼクロス、いや村雨良」
博士は彼の名を呼んだ。
「バダンと戦うんだ。そして世界をその魔の手から救ってくれ、ライダー達と共に」
「・・・・・・・・・わかった」
ゼクロスは静かに言った。
「そうか、そう言ってくれると思ったよ」
三人の博士はその言葉を聞いて微笑んだ。
「だが一つだけ条件がある」
彼は博士達を見据えて言った。
「俺に記憶を戻してくれ。俺は自分が何者かも知らないのだ。貴方達が俺を知っていると言っても正直実感が湧かない。記憶を取り戻してくれるのなら
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