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仮面ライダーZX 〜十人の光の戦士達〜
失われた記憶
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かしそれは一部分に過ぎない。御前は一部分だけを見てそう言っているだけだ」
「・・・・・・ほお」
 ヤマアラシロイドの目の光が冷たくなった。
「俺は人間を信じる。そして俺もまた人間になりたい。御前の誘いを受けるわけにはいかない」
「ではバダンには戻られないのですね?」
「そうだ。そして俺は記憶を取り戻し人間になる」
「・・・・・・そうですか」
 ヤマアラシロイドはそれを聞いて目をゆっくりと閉じた。そして再び開いた。
「ムッ」
 その目は真っ赤になっていた。その目で村雨を見る。
「なら仕方ありませんね。バダンに仇をなす者は消えてもらわねばなりません」
 全身を邪悪な気が包む。それは刺す様な刺々しい気であった。
 村雨も身構える。闘いがはじまろうとしていた。
 だがヤマアラシロイドはその気を急に鎮めた。そして目も元の色に戻った。
「・・・・・・ここでは止めておきましょう」
 彼は微笑みを顔に浮かべて言った。
「どういう事だ?」 
 村雨は彼に対して問うた。
「貴方と戦うにはより相応しい場所があるからです」
 彼は静かに言った。
「相応しい場所!?」
「ええ。貴方のその薄っぺらい人への思いがすぐに剥がれる場所がね」
 彼はそう言うとニヤリ、と笑った。
「剥がれる場所・・・・・・」
「そうです。まあそれはすぐにわかりますよ」
 彼はそう言うと踵を返した。そして屋敷の出口へ向かった。
「すぐにまたお会いすることになるでしょう。その時を楽しみにしておいて下さい」
 屋敷を出た。そして姿を消した。
「行ったか」
 村雨は気配が遠くへ去って行くのを感じた。今からでは負い付く事は無理だろう。
「それにしても俺の思いが剥がれる場所か」
 ヤマアラシロイドが言った言葉を思い出した。
「一体どういう意味だ。そして何を考えているのだ」
 彼は怪人が去った屋敷の出口の方へ顔を向けた。そこからは太陽の淡い黄金色の光が差し込めていた。


失われた記憶    完



                                  2004・2・16


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