氷の空に舞う翼
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か」
そこにいたのは三影だった。役を不敵に見下ろしながらそう言った。
「言ってくれますね。追って来たのはそちらでしょうに」
「ふ、確かにな」
彼は懐から煙草を取り出しそれに火を点けながら言った。
「それが何かは知らんが気になる。大人しく渡してもらおうか」
「生憎ですが貴方達には無用の長物ですよ」
「しかし貴様等にとってはなくてはならないものだろう。渡してもらう理由はそれで充分だ」
「随分強引な理論ですね」
「それがバダンだ。理屈なぞ要らん、力さえあればいいいのだ」
彼はそう言うと下に跳び下りて来た。
「だが安心しろ。俺は他の多くの連中とは違う。約束は守る。だからそれを渡せば今日は御前の命を預けておく」
「今日は、ですか。随分と自信がおありで」
「俺はバダンの中でも選び抜かれた男、俺に適う者は一人を除いていない」
彼はそこで口調を微妙に濡らした。
「そう、一人を除いてな」
サングラスの奥の目が光ったように感じた。だが役はそれに気付きながらもあえて黙っていた。
(どうやら複雑な事情があるようですね)
三影は下に下りただけでこちらに近付いては来ない。ただ立っているだけである。
「さて、返答を聞かせてもらおうか。渡すのか、渡さないのか」
「それはもう決まっています」
「では聞かせてくれ」
「ノー、です」
彼は微笑んで言った。顔は笑っていたが声は笑ってはいなかった。
「そうか」
三影はその返答を聞くとサングラスを外した。
その左眼は普通の人間の眼であった。だが右眼は違っていた。
感情の無い機械の眼である。それが役を睨んでいた。
「消えろ」
彼は一言そう言った。すると肩から何かを発射した。
「ムッ!?」
それは砲弾だった。次々と役めがけ放ってくる。
役は跳んだ。だがそれは三影も予想していた。空中めがけ砲撃を続ける。
爆発が役の身体を包んだ。そして彼はその中に消えた。
「素直に渡していればいいものを」
三影は爆発が消え去るのを見ながら言った。そしてサングラスを再びかけようとする。その時だった。
「ムッ!?」
気配を察した。その気配は遥か遠くへ去って行く。
「逃げたか。どうやって逃れたかは知らないが」
彼はサングラスをかけず手に持ってその気配がした方を見た。その向こうあの男は行った。
「やってくれるな。どうやらライダーだけではないらしい」
踵を返した。そして階段を降りて行く。
「次はこうはいかん。手加減はしないぞ」
彼はそう言うと街の中へ消えて行った。それを遠くから見る男がいた。
「ふう、危ないところでしたね」
それは役だった。あるビルの上で何処から取り出したのか水晶から彼を見ている。
「ですがこれで失われたものが戻りますね」
彼は水晶に
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