手を繋ぐ姉
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である。
「せーのっ!」
あたしは気分を切り替えて、水を跳ねあげて小川に踏みいった。
水滴はきらきらとオレンジの西日に透け、あたしのまわりに優しく落ちる。
冷たい水はとても心地よく、時折あたしの足に小魚がコツンと当たっては慌てて逃げて行く。
あーいい気持ち!やっぱり水は好き。水も土も太陽の光も。村で毎日毎日嫌って言うほど見てたけど、やっぱり水の涼やかなにおいをかいだり、ぴかぴかの太陽に照らされてると、生きてるって感じがする。
あたしは大きく息を吸うと、つぷんと水に沈みこんだ。
瞳を大きく開けば、純度の高い澄んだ水中をはっきり見ることができる。
目の前を小魚の群れが素早く横切って行く。水面に橙の光が反射して、ゆらゆらと水中を照らす様は、とても幻想的で綺麗。じわりじわりと清廉な水に洗われて、べっとりとこびりついた石飴がゆるゆる流れてゆく。
その時、川の流れとは違う水音が聞こえた気がして、あたしは動きを止めた。
ん?…気の、せい?
と思ったその時だった。あたしはいきなりすごい力で腕を掴まれ、ぐわりと水上に引っ張りあげられた!
あたしは呆気にとられてあたしを引きずりあげた相手を見た。
頭から顔まですっぽりと布を被ってる…背の高い男。デジャヴを感じるが、布から覗く瞳は、黒ではなく、濃い赤、だ…。
「…」
「…」
あたしたちはお互いに無言で見つめあった。
けぶる睫毛ひとつひとつが見えるほど至近距離でありながら、あたしは飛び退くこともなく、恥じらいすら忘れたかのようにじっと見つめた。
目しか見えなかったが、男がふっと表情を緩めたのがわかった。
「失礼した。溺れているかと思ったのだ。私の勘違いだったようだ」
「あ、いえ、あの、はい…」
あたしは男の目を見つめたまま、ぼんやりと呟いた。
男はあたしの腕をそっと放すと上から下までみて、思い付いたようにあたしの頬に張り付いた髪を優しく払った。
男の指の硬い皮膚が、あたしの柔い頬を辿って消える…。
あたしはなにも言えず、ただ男の顔を見ていた。ひとつだけわかっていることは、あたしの顔絶対今ありえないくらい真っ赤になっているということ。
男はそんなあたしの顔を見て、相顔を崩した。
「はは。私はまた失礼をしたようだ」
あたしの否定の言葉は声にならず、男はそんなあたしの手を引いて岸にあがらせてくれた。
「寒いだろ
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