第173話
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たと適当に嘘をついた。
お見舞いに来ようと思っていた同僚もいたが、愛穂が事前に断っておいた。
愛穂は周囲を見渡す。
あちこちのブースで展示されているのは、色とりどりの人殺しの道具だ。
これまであった、『暴走能力者を最低限のダメージだけで捕獲する』といった色合いは影を潜めていた。
その代わりとして登場したのは、戦車の影に隠れたら、その戦車ごと標的を貫通するような、大威力・高殺傷力の兵器ばかりだ。
ここまで急激に方向転換を遂げた理由といえば、
(やっぱ、これしか思いつかないじゃんか。)
愛穂がチラリと見たのは、エンジニアが扱っているノートパソコンだ。
画面には今まで愛穂がデモンストレーションで搭乗していた駆動鎧のデータの他に、小さなウィンドウでテレビ画像を表示している。
映っているのはニュース番組で、アナウンサーが原稿を読み上げている。
「現地時間で昨夜未明、フランス南部の工業都市トゥールーズで宗教団体による大規模な抗議運動が発生しました。
街の中心を走るガロンヌ川に沿って数キロの道のりが人で埋め尽くされ、現在も交通を始めインフラ網に深刻な影響が出ています。』
録画された映像では、真っ黒な街を松明の炎で明るく染めて練り歩く集団が大挙している。
フランス語で罵詈雑言の書かれた横断幕を手にした男女や、学園都市の看板に火を点けて大きく掲げている若者などもいる。
一応彼らは『抗議活動』をしているだけであって、統制を失った暴徒ではない。
それでも数万もの数の人間が怒りを露にして街を練り歩く様子は、見ていて寒気を覚えるほどの威圧感を与えてくる。
『自動車関連の日本企業が点在する地域周辺などで特に活動が盛んである事から、これも学園都市に対するアンチ行動の一環だと推測されます。
フランスは国民の八割以上がカトリック系ローマ正教徒であると言われており、同様の活動が複数の都市でも見られる事から』
それでも、まだこの場合はマシな方だったかもしれない。
しばらく画面を眺めていると、次は愛穂や麻生達と一緒に見ていたニュースが再び流された。
『ドイツ中央部のドルトムントでは、盗難されたと思しきブルドーザーがカトリック系の教会へ突っ込み、中にいた神職者九人が重軽傷を負うという事件が発生しています。
これは一連の抗議活動に対する報復であると推測されていますが、現在までに犯罪声明のようなものは出されていません。
今後ローマ正教派と学園都市の間で争いが激化するとの懸念が広がっていて』
一度見たものだが、それでも忌々しさは拭い切れない。
まるで小さな火種が乾燥した藁の山へ燃え移るように、ここ数日で世界の動きは大きく変わった。
ローマ正教側が世界中で同時に起こすデモ活動
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