街を覆う毒霧
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義、力ある者こそ正しいのだ」
「・・・・・・・・・」
ストロンガーは何も言わなかった。三影の言葉に賛同したからではない。全く異なる考えを持っていたからだ。
力の無い正義は悪に敗れる。だが心無い力は正義に敗れるからだ。彼はこれまでの戦いでそれを知った。
「バダンの力、見せてやる。そしてその前にひれ伏すのだな」
彼はそう言うと姿を消した。後には獣のような気が残っていた。
大阪でのバダンの作戦を阻止した城はルミと共に東京への帰路についた。
「あれ、新幹線は使わないの?」
ルミの親戚の家を発とうとした城はルミに頼みごとをされたのだ。
「うん、行きも帰りもそうだと飽きちゃうし」
ルミは城のバイクの後ろに乗りたいと言ったのだ。
「そうか、俺は構わないけれど俺の運転はかなり荒っぽいぜ。それでもいいかい?」
「はい、それも旅の楽しみの一つですし」
「そうか、じゃあこれ被りな」
彼はそう言うとバイクのシートを取り外してその中からヘルメットを取り出した。
「はい」
ルミはそれを受け取った。そして頭に被った。
「少し大きいですね」
「あ、済まない。昔の連れのヘルメットなんだ。子供にはちょっと大きいかな」
「城さんのお知り合いの方ですか。立花さんですか?」
「いや、違うよ。それを被っていたのは女の人だったんだ」
彼は優しい顔をして言った。
「女の人・・・・・・・」
「そうさ、長い間一緒にいた。もう遠いところへ行ったけれどね」
彼はそう言うと正面へ顔を向けた。そして空を見た。
「遠いところへ?」
「そうさ、とても遠いところだ。二度と会えないような」
「・・・・・・・・・」
ルミにはそこが何処か何となくわかった。だがそれはあえて口にはしなかった。
「その人のヘルメット、私なんかが使っていいですか?」
「ああ、かまわないよ。あいつも喜んでくれるだろうし」
「はい」
ルミはそのヘルメットを再び被った。そして城の後ろに乗った。
「行くか」
「はい。おじさん、また来ますね」
二人はルミの親戚達に別れを告げると。アクセルを踏んだ。エンジンがかかった。
(ルリ子、見ていてくれよ。きっと悪い怪人達のいない世の中にしてみせるからな)
城は心の中で言った。
(だから見守っていてくれ)
「あれっ、城さん何か言いました?」
声に出していたのだろうか。不意にルミが尋ねてきた。
「いや、何も」
城はそれを否定した。バイクが走りはじめた。
「じゃあ帰るか」
「はい」
バイクはルミの親戚の家を後にした。そしてすぐに車の中に入っていった。
街を覆う毒霧 完
2004・1・30
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