十一話 少年の夢見た幻想
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ために――シュウは背の突撃槍に手をかけ、抜きざまに振りぬいた。
「なっ――!?」
目を見開き驚愕を露にするアルバ。振るわれた突撃槍の穂先は僅かに彼の頬をかすめ、糸筋程のダメージエフェクトを刻んでいた。その傷がアルバのHPに与えたダメージは二桁にも及ばないごく小さなものだった。しかし圏外でグリーンカーソルのプレイヤーを傷付けたことにより、シュウのカーソルは犯罪者プレイヤーを示す鮮やかなオレンジ色に変化する。
「シュウ……お前」
「これは決闘なんて高尚なものじゃない、相容れない俺と、お前の、殺し合いだ」
その判断が正しいかどうかなど分かりはしない。むしろ多くの人間は命を蔑ろにした、短絡的な愚行だと非難するだろう。しかしシュウにはこれ以外に彼の意思を曲げずに止める選択は思い浮かばなかった。
「剣を抜け、アルバ。お前がこの世界でしか生きられないというなら、アインクラッドに生きた剣士アルバートを、俺も一人のランス使いシュウとして――殺してやる」
言い放った殺害宣告に、アルバは目と口を丸く開けて呆然と固まる。やがてシュウが告げた言葉の無いように理解が及んだのか、身を震わせ始めた彼の口から漏れたのは友人から向けられる殺意に対する嘆きではなく、歓喜に満ちた哄笑だった。
「ハ、ハ、ハ……ハハハハハハッ!なんだよそれ……最っ高じゃねえか!」
跳び退がり距離を取りながら背の両手剣を抜刀するアルバ。その顔には嬉しくてたまらないというような笑みが貼り付いてる。
「そうか――そんな手があったよなぁ!やっぱりお前は最高だぜシュウ!」
剣先を後ろに向け腰の位置に構えるアルバに向き合い、シュウも右手の突撃槍を引き込むと盾を左手に持ち半身で立つ体の前に構える。
「言っとくが殺されてやるつもりなんか微塵もねえからな、覚悟は出来てるんだろうな?」
「そういうお前も、これから殺し合う相手にお喋りが過ぎるぞ、まさか怖気づいたんじゃないだろうな」
「ハッ、相変わらずこういうときばっかり口が回る奴だな……行くぜ!」
獰猛な笑みを浮かべたままアルバが走り出す。そうして宵闇の中、誰に知られることもない二人の戦いが始まった。
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