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ソードアート・オンライン 幻想の果て
十一話 少年の夢見た幻想
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「……」

「リアルの肉体が限界を迎えたら、この世界での生も終わりだ、それでも――」

「それでも、だ」

こちらの言葉を遮り、かぶりを振ってアルバは言う。

「あと数年、数ヶ月しか生きられないとしても、俺の気持ちは変わらねえ。俺はこの世界で生きて、この世界で死ぬと決めたんだ。攻略組にもいつかは追いついて、どんな方法を使ってでもクリアなんて止めてやる。そのためにレベルだけは上げてきたんだからな」

「……そうか」

睨むようなきつい少年の瞳と暫しの間向き合う、やがて一瞬くしゃりと表情を泣きそうなものに歪めたアルバの方から顔を伏せるように視線を落としてしまう。

逃げるわけでもなく、待つように彼がここに留まっていたのは、ひょっとするなら仲間を欲しがっていたのかもしれない。シュウがこの世界で思いを同じくして生きてくれはしないかと、期待してしまったのか。

「あーあ、残念だな。ま、無理だろうなーっては思ってたけどよ」

またしばらくして顔を上げたアルバは笑った顔を取り繕い、頭の後ろで両手を組むとことさらに明るい声を出してみせる。

「さってと、それじゃあお別れかな?牢屋送りにしたいだろうけど悪いな、逃げさせてもらうぜ。俺まだグリーンだし、この話が出回ったらやりづらくはなるだろうけど、それはそれで楽しめるかもな」

「いいや、その必要はないさ」

MPKを計った以上アルバの扱いは犯罪者(オレンジ)プレイヤーと変わりない。ならば第一層に存在する黒鉄宮の監獄エリアに閉じ込めておくのが通常のプレイヤーの対応である。捕まえようとしても敏捷値に多くのステータスポイントを振っている彼を捕らえることはできないだろうが、シュウはそんな方法を取るつもりは無かった。

「……見逃すってのか?」

その問いかけにも首を振って否定を示すと、アルバはわけがわからないというように疑念を顔に浮かべた。それも止むを得ないことだろう、今から自分が行おうとしていることは普通ならば理解に苦しむ行いだろうから。

「お前が、ただこのゲームで楽しむ時間を引き延ばすためだけにトールを殺そうとしたんだったら、牢屋送りにしてやるつもりだったよ。だけど聞いてしまったからな、お前がこの世界で死ぬつもりだと」

彼が生きたいと願える場所はもうこの世界以外に無いということをシュウは理解してしまっていた。もし彼を牢屋に繋いでおくことが出来たとして、そのままこのゲームがクリアされたとしたらこの少年はどんな思いを抱くだろうかと考える。

何よりも大切にしていたものを取り上げられ、あの生き生きとしていた少年が絶望に沈む様を思い浮かべる。そんな彼を見たいとは思えない。だが彼の決めた道を受け入れることは出来ない、ならばどうするべきか、考え抜いた末に出した答えを示す
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