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ソードアート・オンライン 幻想の果て
十一話 少年の夢見た幻想
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常の繰り返しで、何の面白みもない退屈な本物の現実なんかよりずっとな」

やはり、という念を抱きながらシュウは目を細めて、今まで誰にも明かすことの無かったろう胸の内を語っていく少年の横顔を見続けた。

「たとえこの世界から帰った後、他のVRMMOが作られたとしても、そこには絶対に死なんて無い。この日本でそんなことが許されるはずがねえからな。だから、SAOはこんなガキの頃想像したような夢みたいな世界で生きれる最初で最後のチャンスなんだ。……なあシュウ」

「なんだ?」

「この世界、楽しいだろ?」

その問いかけをするアルバの顔は笑っていて、しかし瞳だけは迷子になった子供のように揺れている。攻略に熱意を燃やすプレイヤー達を見るいつもの彼のような寂しそうな表情だった。

「ああ、楽しかった。夢中になりそうなぐらいにな」

返した答えにアルバが笑みを深める。シュウ自身、幼い頃にこの世界のような幻想に満ちた世界を夢想したことはある。そしてほとんどの少年がそうであるように、やがてはそんなものは有り得ないのだという現実に醒めていった。

他の少年よりも幾分早くその境地に至っていたシュウはそんな夢を見ることの空しさを自覚していた故に、仮想とはいえその幻想を実現させたこのSAOという世界に惹かれ、その世界の創造主たる茅場晶彦の宣言を受けたとき思ったのだった。

この男は夢を諦めきれなかったのだなと。同時に理解されないものと分かっていたのか、その夢を誰に明かすことも無くこのような形で実現させたこの男の人生はさぞかし寂しいものだったのではないだろうかと。だから――

「少し、付き合ってやろうと思ったんだ。茅場晶彦に」

「――え?」

唐突に脈絡の無いことを言い出されアルバはきょとんとした顔をしていた。この少年も茅場晶彦と同じく、夢を心のどこかで諦めきれず、そして彼の作り出した世界に魅せられてしまったのだろう。

「アルバ、リアルの俺達の体がどうなっているか、想像したことはあるか?」

「……ああ、大体どうな状態なのかってのは予想はしてるよ」

SAOに接続しているプレイヤー達の現実世界における肉体はナーヴギアにより意識を閉じ込められ寝たきりの状態となっている。そしてSAOがデスゲームとして開幕して数日経った頃、プレイヤー達が一時的に回線切断状態に陥るという事件が発生したことがある。

おそらくはその脳が破壊される猶予時間の間に、外部の者によりプレイヤー達の肉体が病院施設に移送され介護可能な状態でSAOに接続されなおしたのだろうというのがその事件に対するプレイヤー達の一般的な見解だった。

「おおかた、俺達の体はベッドの上で点滴でもうたれながら生かされているんだろう、そんな状態がいつまでも続くと思うか?」


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