十一話 少年の夢見た幻想
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たアルバの行動は明らかにモンスターを利用し、トールを殺害しようとする俗にMPKと呼ばれる行為だった。
ゲーム中での死が現実の死と同義であるこのSAOでそれは最も忌み嫌われる所業に他ならない。
「あのモンスターは《アンバー・ハート》を持っているプレイヤーを最優先で狙う。それを利用して俺がトールを殺そうとしたことぐらい、お前なら分かってるだろ」
ハニー・イーターがトールのみをターゲットしていた理由、メニューを開き不審がられるのを避けるためあらかじめオブジェクト化させ隠し持った《アンバー・ハート》を破壊することでアルバはトールにかの大熊を差し向けていたのだろう。
「それは多分、分かってるよ」
「……へえ?」
未遂に終わったトールの殺害を決行した理由を言うまでもなく理解しているという答えに、目を瞠ったアルバの顔を見据えてその言葉を口にする。
「お前は終わらせたくないんだろう、この世界を」
ソードアート・オンラインをクリアしデスゲームからの解放、ひいてはこの世界を終わらせること。ほぼ全てのプレイヤー共通の思いであるはずのそれを望んでいないのだろうという指摘に、アルバはいつもの、むしろそれよりも楽しげですらある深い笑みを浮かべて答えた。
「正解、だ。どうして気づいた?」
まるでどう答えるのかを楽しみにしているかのような様子に、ため息を一つ吐いてみせてから言葉を紡いでいく。
「前にも言ったろう、お前はこの世界を楽しみすぎだと。それから攻略を語ってるトールを見るお前の目が――寂しそうに見えてな」
「くくく、そうか、俺はそんな目をしちまってたのか……ああ、そうだ。俺にとっては攻略熱心なやつらは疎ましくてしょうがなかったんだ。シュウはトールが支援してるプレイヤー達のこと見たことあるか?」
「ああ、何度か見たことがあるよ。あのレベリング速度でプレイヤースキルまでしっかり上達させてるのには驚いた」
「凄かったろ、トールのやつリアルじゃ教師目指して子供の家庭教師なんかやってたらしいぜ。教えるのが上手いわけだ。だから……思っちまったんだよな、こいつは攻略を早めるだろうなって」
視線を外して遠くの星空を眺めるように目を移したアルバはいつしか笑みを消していた。
「今は影響無くても、あれだけの数のプレイヤーが育っていけばいつかは攻略組に追いついて、前線を押し上げる。でもな、俺にはありがたくない話なんだよ。……俺にとってはこの世界こそが現実なんだから」
「現実、か」
「そうさ、茅場晶彦のチュートリアルを受けたとき、他の奴はどうだか知らないけどよ、俺は心の底から興奮してたんだ。作り物でも死が本物なら間違いなく、この夢みたいな世界で俺は生きてるんだって実感できる。少なくとも、毎日同じような日
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