海魔泳ぐ海
[7/16]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
あるし」
「あそこは大きな軍港ですからね。大和が作られた程の」
「はい。よくご存知ですね」
大和は第二次大戦の時の有名な戦艦である。巨大かつ美しい姿をしていた。おそらく今までの軍艦の中で最も美しいものであっただろう。今は沖縄の海に眠っている。
「今はあんな大きな船はありませんけれどね。それでも多くの軍艦がありますよ」
神は楽しそうに言った。まるで子供の様に無邪気な顔である。
「ほう、それだけあるのか。それは沈めるのが楽しみだな」
何処からか声がした。
「何っ!?」
二人はその声に身構えた。そして辺りを見回す。
「バダンかっ!?」
「いかにも」
声がした。そして海から複数の影が現われた。
「神敬介、そして役清明か。はじめまして、と挨拶をしておこうか」
その影の中央にいる男が言った。
「バダン改造人間の一人カニロイド、貴様を倒す男の名だ」
彼は不敵に笑ってそう言った。
「ほう、カニロイドか。一連の沈没事件は貴様の仕業だな」
「その通り」
カニロイドは言った。その間にもジリジリと間合いを詰めてくる。
「瀬戸内の安全を脅かし船の行き来を止める。そして日本の経済を破綻させる為にな」
「ほほう、考えたな。だが俺達に見つかったのが運の尽きだったな」
神も身構える。その目が油断なく光る。
「それはどうかな。俺は逆に運がいいと思っているのだ」
「何っ!?」
「貴様の首を偉大なる我等が首領に捧げる事が出来るのだからな」
彼はそう言うと両手を掲げた。するとその手が赤い鋏になった。
そして全身が変化していく。脇からも足が生え背中から巨大な鋏が生える。皮膚が甲羅になっていく。
「・・・・・・それが貴様の姿か」
「そうだ、この素晴らしい姿を冥土の土産に覚えておけ」
彼はそう言うと口から泡を吐き出してきた。神と役はそれを左右に跳んでかわした。
「御前達は役をやれ。俺は神敬介を倒す」
「ハッ」
戦闘員達はそれに応えた。そしてその言葉通り役に向かっていく。
「フフフ、行くぞ神敬介よ」
彼はそう言うと間合いを詰めてくる。そして鋏を振りかざした。
「ムッ」
神はそれをかわした。次々に繰り出される四つの鋏をかわす。
だがそれにも限界がある。彼は砂浜の松の木の前にまで追い詰められた。
「どうした、もう逃げ場所は無いぞ」
カニロイドは笑った。残忍な笑みであった。
「これで終わりだ、死ねぇっ!」
背中の巨大な二つの鋏を突き立てる。それは恐ろしい唸り声をあげて神に襲い掛かる。
今まさに貫かれんとするその時であった。彼は右に跳んだ。
「クッ!」
鋏は松の木を打ち砕いた。木は真っ二つになって折れた。
「何処だっ、神敬介!」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ