海魔泳ぐ海
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「なっ!?」
「まさかっ!」
そのまさかだった。船が急に傾きだしたのだ。
「船長、大変です!」
艦橋に船員の一人が駆け込んできた。調理担当の者だ。
「何が起こった!」
船長は彼に問うた。
「船底から浸水です!それも複数の箇所からです!」
「何っ!とりあえず応急処置で穴を塞ぐんだ!」
船長はすぐさま指示を下した。
「それは休息を取っておられた副長がただ今やっておられます」
「そうだった、彼がいた」
船長は副長のことを聞いて安堵した。この船を彼と共に取り仕切っている男である。彼とは長い付き合いで互いによく知る間柄である。彼に任せておけば大丈夫だと思った。
「ですが穴が次々と空いていくのです。流石の副長にも手の施しようがありません」
「なっ、次々とか・・・・・・」
船長も航海士もそれを聞いて呆然とした。普通に考えて有り得ない事だ。
「副長が私にこちらに行くよう言われたのは手遅れにならないうちに船長に総員退艦の指示を出して頂く為です。どうかご決断を」
「・・・・・・・・・」
船長はその言葉に顔を暗くした。だがそれ以外に決断は下しようがなさそうであった。船の傾きは最早まともに立ってはいられない程にまでなっていた。
「・・・・・・わかった、すぐに総員退艦に移れ」
彼は言った。そして海にボートを次々と出しそれに乗り込んでいった。
最後に船長がボートに乗り込むと同時に船は沈んでいった。艦首があっという間に海の中に没していく。
「・・・・・・なんという事だ。これは夢ではないのか」
船長は自分が今まで乗っていた船が瞬く間に海の底に消えていくのを見て呆然とした顔で言った。
「残念ながら。その証拠にこの場にいある我々全員が証人ですから」
同じボートに乗る航海士が言った。彼等は岸辺に向けて力無く漕ぎだした。
それを遠くから見る影があった。海の中から彼等を見ていた。
「フフフフフ」
影は笑っていた。その姿は暗闇の中でよく見えないが人のものでない事はよくわかった。
影は海の中へ消えた。そして海は暗闇の色をたたえていた。
「そうか、瀬戸内での作戦は順調に進んでいるか」
暗闇大使は指令室で報告を聞き満足気に頷いた。
「はい、昨日も貨物船を一隻沈めたようです」
戦闘員の一人が報告した。
「貨物船か、また大物をやってくれたな」
暗闇大使はさらに機嫌をよくした。その目を細くさせる。
「奴に伝えよ、その調子で船をどんどん沈めろとな。そして瀬戸内に船が通らないようにするのだ」
「ハッ、それではそのようにお伝えします」
戦闘員の一人がそう言って敬礼した。
「瀬戸内の安全が脅かされれば日本の経済に与える影響は大きい。そして日本の経済を混乱に
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