魔虫の潜む街
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結城と竜は犀川の大橋の上を渡っていた。
この橋は文禄三年(一五九四年)に利家により造られたのが最初と言われている。その後洪水等で長され今の橋になった。ベンチが置かれ市民達の憩いの場所ともなっており国の重要文化財にも指定されている。
かってこの橋の上で松雄芭蕉が句を詠んだと言われている。
『あかあかと日はつれなくも秋の風』
この句は今も残っている。
「次は何処に行きますか」
結城は竜に尋ねた。
「そうですね。ひがし茶屋街に一つ怪しい蔵があります。そこへ行きましょう」
「はい」
二人は橋を後にした。
浅野川沿いにあるひがし茶屋街は夜になると町の旦那衆が集まり酒をたしなみ芸者遊びに興じていた。その為か店の気位も高く所謂一見さんお断りの店も多かった。
だが今は茶屋を改修した喫茶店等も多く、観光地としてにぎわっている。
町並みは当時の情緒を今に伝え、風流の風が漂っている。夜になると艶やかな趣を漂わせる。見る物はその風流と艶やかさに心を奪われるのだ。
「できれば夜来たかったですね」
竜は微笑みながら言った。
「今は芸者さんはいませんよ」
結城はその言葉に苦笑した。
「いえ、芸者さんではなく。こういった町は夜に行く方が味わいがあるのです」
「そんなものですか?」
結城はその言葉に眉を少し動かした。
「ええ。時代劇なんかでもそうでしょう。昼に行くのと夜に行くのとでは感じが全く異なるのです。特にこうした遊びの町ではそうした感じが特に強いのです」
「成程。確かにそれはありますね」
結城はその言葉に同意した。
「さてと、その蔵ですが」
竜は町を見回した。
「こちらです。少しわかりにくい場所にありますが」
竜に案内され結城はその蔵へと向かった。
蔵は何処かの豪商のものだったのであろうか。かなりの大きさだった。それがいくつか連なっている。
「ここの何処かにあるのですね」
結城はそれ等の蔵を見ながら言った。
「はい。大体の目星はつけていますけれどね」
竜はそう言うとそのうちの一つの扉の前に行った。
「ここです。さあ入りましょう」
竜は鍵を開けた。そして二人は蔵の中に入った。
蔵の中は暗かった。そして葛籠が積み重ねられていた。
「あれですね」
結城はその葛籠の中に大切に飾られている一振りの刀を指差した。
「はい」
二人は刀に近付いた。その時だった。
不意に後ろの蔵の扉が閉まった。そして二人の前に幾つかの謎の影が飛び降りて来た。
「ムッ!?」
それはバダンの戦闘員達だった。たちまち二人を取り囲んだ。
「国切を狙ってか!」
結城が問い詰める。だが彼等はそれに答えようとはせず刀に向かう。
「渡さん!」
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