魔虫の潜む街
[7/20]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ず見事な作戦指揮ですね」
その時部屋の扉から声がした。そして誰かが部屋に入って来た。
部屋に入って来たのはあの白人の中年の男だった。相変わらず慇懃な物腰で穏やかな笑みを浮かべている。
「ほう、誰かと思えば貴様か。一体何の用だ」
「ちょっといい物が手に入りましてね。どうです?」
彼はそう言って何かを差し出した。それはワインのボトルであった。
「トカイの年代物です。一杯やりませんか」
だが男はそれに対し複雑な顔をした。
「気持ちは有り難いが受け取るわけにはいかないな、残念だが」
「あっ、そうでしたね。これは失礼」
そのトカイをしまおうとする。
「いや、それは戦闘員達に渡してくれ。わしはともかく戦闘員達は飲みたい者もいるだろうし」
「そうですか。それではここに置いておきますよ」
彼はそう言うとそのトカイのボトルをテーブルの上に置いた。
「的確な指揮と部下への心遣い。流石は英雄イブン=サッドゥータです」
「その名はよしてくれ。人減だった時の名だ」
「そうですか。それではクモロイドとお呼びしましょうか」
「そうしてくれ。今のわしにはその名しか必要無い」
その男、クモロイドは静かな声で言った。
「ところでここに来たのは単にわしと酒を飲みに来ただけではないだろう。何の用だ?」
「はい、実は貴方にお伝えしたい事がありましてね」
男の目が光った。穏やかな笑みはそのままに目だけが光った。
「バラロイドが倒れました。北海道の作戦も失敗に終わりました」
「・・・・・・そうか、惜しい者を失くしたな」
クモロイドは残念そうに言った。
「まだ完全に死んだわけではありません。また改造手術を受け復活するでしょう」
「それならばいいが。今あの者の力なくして我がバダンの世界制覇はないからな」
「それは当然です。それは貴方にも言えるのですよ」
「・・・・・・わしもいざという時は再び改造してもらえるというのか」
「それが我等が首領の御遺志です」
男はその言葉を聞き感慨深げに呟いた。
「有り難いな。それでこそ我等が神だ」
「残念な事にその偉大なる神に逆らい続ける愚か者達もいますが」
「わかっている。ライダーマンの首はこのわしが必ず持って帰る。国切と共にな」
「その言葉を聞いて安心しました。それではご活躍を期待していますよ」
男はそう言うとそれまで不気味に輝かせていた目を再び綻ばせた。そして右の親指と人差し指をパチン、と鳴らした。
それを合図として男は姿を消した。フッとまるで影が消える様にその姿を消した。
「我等が偉大なる首領の為に・・・・・・行くぞ!」
「イイーーーーーッ!」
戦闘員達が一斉に敬礼した。そして部屋を後にするクモロイドを見送った。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ