魔虫の潜む街
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です」
「ええ、それはわかっているつもりです。現にインターポールも各国の特殊部隊も密かに警戒態勢に入っています」
「ならいいのですが。ところでこの地のバダンについてお話を窺いたいのですが」
結城は竜にバダンについて尋ねた。彼はそれに対し無言で頷いた。
「これを御覧下さい」
彼はそう言って懐から何かを取り出した。それは数枚の写真だった。
写真は金沢市の風景のものであった。どれも実に美しい。
「・・・・・・・・・」
結城はそれ等の写真を見て眉を顰めた。その写真に隠れるようにして彼等が映っていたからだ。
「やはり気付かれましたね。バダンがこの地である物を探しているようなのです」
竜は結城を見つつ言った。
「ある物とは?」
結城は写真を卓の上に置き尋ねた。
「前田家の秘宝です」
「前田家の秘宝!?」
結城は思わず声を上げた。
「はい。前田家は百万石の権勢を誇りました。その栄華は江戸時代を通じて謳われるものでした」
「それは私も知っています。この街並みを見ただけで」
「前田家はそれだけに多くの家宝を所持していました。例えば大典太光世」
大典太光世とは平安時代の刀鍛冶光世により作られた刀である。足利将軍家、豊臣秀吉を経て前田利家に与えられた天下五剣の一つに入れられる名刀の一つである。
この刀は静御前の薙刀、宗近の短刀と並んで前田家の宝であった。その霊力により鳥を落としたとも病を治したとも言われる伝説の名刀である。
「他にも多くの家宝がありますが代々の当主のみが知っていた家宝があったのです」
「それは何ですか?」
神剣の様な伝説を残す大典太よりも秘蔵とされた宝、それは一体何なのか。結城はゴクリ、と唾を鳴らした。
「正一位国切」
「国切!?」
結城はその名を聞いて声をあげた。そのような名の剣は聞いた事も無かった。
「ご存知無いのも無理はありません。これは歴史には出て来なかった剣なのですから」
竜は言った。
「しかし刀で正一位ですか。あの日本号でさえ三位だというのに」
日本号は天下にその名を知られた名槍である。黒田節の唄でも知られている。
「はい。ですがこの位はあくまでも公のものではありません。何故ならその力があまりにも大きいものだったからです」
竜は顔を引き締めて言った。
「この刀が何時誰によって作られたのかは誰も知りません。ですが保元の乱の頃には既にあったと思われます」
「保元の乱ですか」
「はい。その形は片刃の曲刀であると伝えられています。当時の権力者平清盛により時の帝に献上されたと伝えられています。ですが帝はそれを清盛入道にお戻しになられました。この様な素晴らしい刀を受け取るわけにはいかないとして」
「時の帝までそう仰られたの
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