魔虫の潜む街
[14/20]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
層の櫓である。これは江戸城に状況がよく似ている。またこの時二の丸に藩主の為の御殿が建てられた。
この二の丸には当初家臣達の屋敷もあった。しかし寛永八年(一六三一年)の大火により城内が再び火に襲われると武家屋敷を城外に出した。そして二の丸を拡大し用水の確保も行なった。そして内堀を掘り土を盛り上げ、各曲輪を区面していった。だがそれでも火は襲って来る。
宝暦九年(一七五九年)の火災で城内の殆どが焼失してしまったのである。その後の再建では城内の実用性を重んじ本丸の焼失した櫓は再建せず二の丸を中心に整備を行なった。現存する門の一つである石川門は天明八年(一七八八年)に再建されたものである。
今の城の景観は明治十四年(一八八一年)の火災で焼失した安政期の景観を再現したものであり当時の面影を今に伝えている。
「何かえらく火事に悩まされている城ですね」
竜はその石川門をくぐりながら言った。
「国切を持つ者はその多くが長く権勢を誇示出来ないようですが。それがもし国切の持つあまりにも強い力のせいだとすると」
結城はそれに続きながら竜に話しかけた。
「まさか。これは金沢の気候のせいでしょう。江戸がその乾燥した空気とからっ風の為に火に悩まされたように」
竜が結城の疑念を打ち消すように言った。
「そうでしょうか。まあ科学的にはそうですが・・・・・・」
何処か自分に言い聞かせるように言う。彼も科学者である。その事はわきまえている。
だが科学が万能ではない事も彼はよくわかっていた。それを彼に教えたのがこれまでの悪の組織との戦いであった。
「結城さんの仰りたい事はわかります。私だって科学的に全てが説明出来るとは考えていませんよ。それは科学者の自惚れに過ぎませんからね」
「良かった。もしここで科学で解明出来ない事なんて無い、とか言われれば困っていました」
「それは言いませんよ。あの連中を見ているとね」
彼もまたバダンとの戦いで多くの事を学んでいた。そして科学だけでは説明出来ない事があるのも実感していた。
「確かに結城さんの説は私も否定しませんよ。何せひとりでに動き回り邪なる者を切る霊刀ですからね。火を起こす事もあるかもしれません」
「はい・・・・・・・・・」
結城は竜の言葉に頷いた。そして二人は城内を進んでいく。
「国切は確か菱櫓の中にあるのでしたね」
「ええ、この地図によりますと」
竜は結城の言葉に対し懐から地図を取り出し確認した。菱櫓は金沢城の象徴とも言える建物である。平成十三年に復元されたもので菱型をしている事からこの名がついた。大手と摺手を見張る物見櫓である。
「さてと、ここですね」
二人は櫓の前に来た。城壁の側に高くそびえ立っている。天守閣とは比較にならないがそれでも威風堂々としている。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ