暁 〜小説投稿サイト〜
仮面ライダーZX 〜十人の光の戦士達〜
雪原の花
[3/16]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話

 「・・・・・・・・・」
 どれだけ上を見上げ続けたであろうか。彼の心に何か特別な感情が宿った。
 「・・・・・・・・・なんだ、この感情は」
 彼は上を見上げながら呟いた。
 「喜びや優しさとも違う。それとは別な、今俺の目に入って来るこの雲と空と太陽を目に焼きつけたい、心に留めておきたい、そして大切にしたいという思いだ」
 博士はその言葉を聞いて優しく微笑んだ。
 「博士、この感情は一体何というのだ」
 彼は顔を下ろし博士のほうを向いて問い掛けた。
 「君は今美しさを知ったんだ」
 博士は言った。
 「美しさ!?」
 村雨は少し困惑したような声で言葉を出した。
 「そうだ。目に入ったものを心で感じ、それを心に留め大切にしたい気持ち。それが美しさを知るということなのだ」
 「この雲が、空が、太陽が・・・・・・。そうか、これが美しいものか」
 その時彼はふと前に見た夜の空を思い出した。濃い紫の帳に散りばめられた星達と月。それ等に対しても彼は今見た雲や空、太陽と同じ感情を思い浮かべた。
 「・・・・・・美しい、こういったものを見てそう思うのだな」
 「それはその人それぞれで微妙に違うがね。まあそう思ってくれて構わないよ」
 博士は彼に問い聞かせるように言った。
 「村雨君、この美しいものを守りたくはないかね」
 博士の顔が急に引き締まる。それまでの微笑みは消え目の光が強くなった。
 「ム・・・・・・・・・」
 村雨は即答しなかった。否、出来なかった。博士の方を見てただ口を閉ざし目だけを向けていた。
 だがやがてその口を開いた。少しずつ、だが確実に。
 「・・・・・・・・・ああ」
 彼は言った。そしてそこには強い意志が見られた。
 「よく言った。それでこそ本当の意味での人間だ」
 博士は彼に微笑んで言った。
 「・・・・・・そうなのか?」
 村雨はその顔に僅かな困惑の色をう浮かべて聞いた。
 「そうだ。勿論まだまだ君に必要な感情はあるがね。しかし美しさを知るというのは人間にとって重要なことなんだ」
 「・・・・・・そうなのか」
 村雨は顔を少し俯けて言った。
 「それもすぐにわかる。そしてそれがどれだけ素晴らしい事
なのかも」
 「これが・・・・・・素晴らしい事・・・・・・・・・」
 村雨は博士の言葉の意味がまだ完全に理解出来なかった。
 「それは君がバダンと戦う時にわかるだろう。そしてそれが君と彼等を分かつものになる」
 「俺と奴等を分かつもの・・・・・・・・・」
 村雨はその言葉を噛む様に繰り返した。
 「その事はよく考えてくれ。決して無駄ではない」
 「そうか、そうしよう」
 村雨はその言葉に頷いた。
 「それではそろそろ出発するか。それとももう少し見ていか?」
 「・
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ