第六話
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まま、文は彼女の胸倉をつかんでそう怒鳴った。
「なにをいきなり……」
「あなたが言ってることは白狼天狗としてじゃない!犬走椛個人としての言い方です!」
「そんなことな……」
「私を苦しめるだのありがとうの一言を言えだの、そんなに上司からほめられたいですか?なら、別の組織でもグループでもいいんでそこに行きなさい。天狗の組織はそんな人は必要ありません!」
「……」
鬼のような形相で怒鳴り続ける文。椛は何も言い返すことなく、ただただ文の言葉を聞くことしかできなかった。
「確かに、私はあなたにとっては気分を害するようなことを多々言っています。ですが、それは白狼天狗が嫌いでも、あなたが嫌いだからというわけではありません!もし、あなたや白狼天狗が嫌いなら、あなたを私の部下にしてほしいと、上司に頭を下げようとも思いません!」
「えっ……」
「……」
文はなぜか後悔したような顔をしていた。
上司に頭を下げる。椛にとっては意外な一言だった。目を丸くしてこっちを見てくる椛。文は、何か覚悟を決めて真相を明かし始めた。
「……昔、あなたとまるっきり同じ性格をした烏天狗がいたんですよ。私の部下になった時は、新人でカメラの操作もろくにできない天狗でした」
「……私と……同じ?」
「その頃の私は、今のあなたのような接し方はしてませんでした。ちょっとしたことでも褒めて、彼女の力量を超えた仕事でも、やりたいと言ったらさせてました。たとえ基礎中の基礎ができていなかったとしても……」
「……」
椛は文の話を自分にあてはめながら聞いていた。
確かに、自分がこの仕事をやってみたいと言っても文は「椛にはまだ早いです」と言って反対していたことが過去に何度かあった。しかし、その数ヵ月後だめもとで同じような仕事をしたいと言うと、「……いいですよ」と言われ呆気にとられた記憶もある。
椛はだんだん自分が何を間違っているのかわかってきた気がしていた。
「ある難しい任務を彼女がやりたいと申し出てきたんです。もちろん、私はそれを許可して行かせてあげました。ですが……今思うと、それが指導者としての……私の最大のミスでした……。任務中、彼女は一番やってはいけない最大のミスを犯してしまったんですよ。当然、任務は失敗。上司の私はこっぴどく叱られました」
「……」
「自分がミスしたと思えるだけなら、そこから頑張っていこうと思うかもしれませんが……彼女にとっては、自分が失敗を犯したことよりも、上司の私が怒られたことが一番つらかったんでしょうね……。その後、私に何も言わずに別のチームに異動していきました」
「……その方は……どうなったんですか?」
「今はまあ……普通に行動
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