暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
SAO
〜絶望と悲哀の小夜曲〜
圏内事件〜殺人者〜
[3/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
力で立ち直り、シュミットは飛び退こうとした。

たとえ喉を切り裂かれても、この世界では即死はしない。

急所ゆえにダメージはやや大きいが、それでもシュミットの膨大な総HP量に比べれば微々たるものだ。

しかし──

体を反転させるより早く、両脚の感覚が切断され、シュミットはがしゃりと音を立てて地面に転がった。

HPゲージを、緑色に点滅する枠が囲っている。麻痺状態だ。壁戦士(タンク)として耐毒スキルを上げているのに、その防御を貫通するとは物凄いハイレベルの毒だ。いったい誰が──

「ワーン、ダウーン」

しゅうしゅうと擦過音の混ざる声が降ってきて、シュミットは必死に視線を上向けた。

鋭い鋲が打たれた黒革のブーツがまず見えた。同じく黒の、細身のパンツ。ぴったりと体に密着するようなスケイルメイルも黒。右手には、刀身が緑に濡れる細身のダガーを携え、左手はポケットに差し込んでいる。

そして頭は、頭陀袋のような黒いマスクに覆われていた。

眼の部分だけが丸く繰り抜かれ、そこから注がれる粘つくような視線を意識するのと同時に、シュミットの視界にプレイヤーカーソルが出現した。見慣れたグリーンではなく、鮮やかなオレンジ色が眼を射た。

「あっ......!」

背後で小さく悲鳴が聞こえ、視線を振り向けると、ヨルコとカインズを一まとめにして極細の剣で威嚇する、やや小柄なプレイヤーが見えた。

こちらも全身黒尽くめだが、革ではなくびっしりと襤褸切れのようなものが垂れ下がるギリースーツだ。

頭部までも覆うその襤褸の間から、暗い赤に光る両眼が見えた。右手に握るのは、ヨルコが持っている逆棘の剣と同じエストックだが、自ら血の色に発光するかのような地金の煌めきは圧倒的なスペックの高さを伝えてくる。

カーソルの色は同じくオレンジ。

この二人を、シュミットは知っていた。直接見たことがあるわけではない。

ギルド本部で回覧される、要注意プレイヤーリストの上位に全身のスケッチが載っていたのだ。

ある意味ではボスモンスター以上に攻略組の仇敵である、殺人(レッド)プレイヤーたち。

そのなかでも最大最凶のギルドで幹部を勤める男たちだ。シュミットを麻痺させたダガー使いが《ジョニー・ブラック》。ヨルコたちを押さえる針剣(エストック)使いが《赤眼のザザ》。

ということは。まさか──()()()までもが。

嘘だろう。やめてくれ。冗談じゃない。

というシュミットの内心の絶叫を裏切るように、じゃり、じゃり、と新たな靴音が聞こえた。

呆然と視線を振ったシュミットは、アインクラッドにおける最大の恐怖を体現するその姿を見開いた眼で捉えた。

膝上までを包む、つや消しの黒いポンチョ。目深に
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ