第54話 常山、山賊掃討戦 後編
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など必要ないと思っていました」
夏候蘭は私の言葉に驚いていました。
彼女は私を何だと思っているのでしょう。
彼女の中の私は『地獄の獄吏』を歪曲化した姿に描いていたのではないでしょうか。
「人は一人では生きてはいけない。私がいくら強くても一人の力ではこの世は変えることはできない」
私は泰山郡でのことを想いながら感傷に耽りました。
夏候蘭は私の言葉を黙って聞いていました。
「だからこそ、私は旅に出た。私の夢を実現するため人材を探しに」
「劉ヨウ様の夢は何なのです?」
夏候蘭は私に聞いてきました。
「私の夢は大したことじゃない。私には麗羽と揚羽の許嫁がいる。彼女達と幸せに暮らせる世を作りたい」
「それでしたら旅をせずとも叶うのでは」
「叶うだろうね。でも、今の世は人が生きるには過酷過ぎる。今後、今より世は乱れるだろう。民が苦しんでいる側で、私達だけ安寧を得ても私は決して幸せを実感できない。私は幼少のとき賊の被害に苦しむ民の惨状を目の当たりにしてきた。それを一度目の当たりにしたら無視などできない。私が幸せになるためには民が暮らし易い世を作る必要がある」
私は夏候蘭を真正面から見て言いました。
「ご、ご立派です。劉ヨウ様を誤解していました。劉ヨウ様が何故賊に誰よりも厳しくあられるのか得心しました」
彼女は私を見て顔を赤らめました。
パチ、パチ、パチ。
拍手の主は趙雲でした。
「劉ヨウ様、感服いたしましたぞ。このご時勢、他人より自分のことを大事と思うもの。あなたは自分だけでなくこの国の民を救いたいとは」
趙雲は私を真剣な顔で見つめていました。
「あなた様の夢を嘘偽りなくお教え願えませぬか?」
彼女の深紅の瞳は情熱的な輝きを放っており、私はその瞳に吸い込まれそうになりました。
趙雲は私がやろうとしていることを聞きたいのでしょう。
民の暮らし易い世は今の漢室では到底無理です。
ならば新たな国を起こさなければならない。
「私はいずれこの国を統一して民の暮らし易すき世を築く」
私のこの言葉は聞くものが聞けば漢室に弓引く逆賊の言葉と思うでしょう。
幸いなことに周囲には趙雲と夏候蘭だけです。
「あなた様がやろうとしていることは自覚しているのでしょうな」
趙雲は殺気を私に放ちました。
「この国の命脈は長くはない・・・・・・。誰かがやらねばならないなどと綺麗事をいうつもりはない。私は今の世の理不尽さを変えたい。そのためならばこの手を幾ら血で汚そうとも厭わない」
私は彼女の殺気に気圧されることなく言い返しました。
趙雲は目を瞑った後、刮目して私の前で膝をつき頭を下げました。
「劉ヨウ様、この趙
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