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副官からのSOS
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エールはわずかに俯く。

「無理なお願いだってことは、私も解っています。でも黒鉄球、生命の碑に彼の名前の部分に横線が刻まれるかと思うとおかしくなりそうで……」

 ユリエールの瞳が潤む。信じてあげたいのだが、感傷だけで動くのは危険と警鐘が鳴っている。ユキを見るとユキもこちらを向いていた。その目には、ゲツガと同じように気持ちが揺れていた。その時、今まで黙っていたユイがカップから顔を上げ、言った。

「ママ、パパ、お姉ちゃん、……お兄ちゃん。その人、うそついてないよ」

 ゲツガたちは呆気に取られる。いきなりの発言の内容もさることながら、昨日までの話し方が嘘のような立派な日本語であった。そしてユイは、俺のほうを見て恐る恐るに聞く。

「お兄ちゃんって呼んでいい……ですか?」

「そんなかしこまらなくていいぞ。好きなように呼んでいいって。それよりもユイ、ユリエールさんの話、嘘じゃないってほんとか?」

「うん。うまく……いえないけど、わかる」

 その言葉を聞いてキリトは、ユイの頭をくしゃくしゃと撫で、ニヤッと笑う。

「うたがって後悔するより信じて後悔しようぜ。行こう、きっと何とかなるさ」

「そうだな。キリトの言う通りだな」

「二人とものんきだな」

「ほんと、のんきな人たちだね」

 アスナはユイの頭に手を伸ばし撫でてユイにゴメンネと言う。そしてアスナはユリエールの方を向いて微笑む。

「微力ながら、お手伝いさせていただきます。大事な人を助けたい気持ち、私にもよく解りますから……」

 ユリエールは空色の瞳に一杯に涙をながら深々と頭を下げる。

「ありがとうございます。……本当にありがとうございます」

「それはシンカーさんを助けてからにしましょう」

 ユキが笑いかけて今まで黙っていたサーシャがポンと両手を合わせる。

「そういうことならしっかり食べていってくださいね!」

「それなら追加を作らないといけないな」

 ゲツガはそう言って、席を立ち上がった。アスナとユキも立ち上がる。

「どうした二人とも?」

「ゲツガ君一人じゃ悪いと思ってね」

「そうそう」

「ありがとな、二人とも」

 そしてご飯を食べ終わったらユリエールとともにダンジョンへと出発した。
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