地底からの魔手
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までの抑揚の無い無表情な声ではなかった。僅かではあるが嬉しさのこもった声であった。
「ワン」
子犬は吠えた。そして飼い主達の方へ顔を向けた。
「ん」
村雨もそれに気付いた。どうやら飼い主達の方へ帰りたがっているようだ。
「そうか」
村雨はそれを察して二人に子犬を返した。子犬は嬉しそうに二人の胸へ飛び込んで行った。
「御前も嬉しいのか。飼い主達のところへ戻ることが出来て」
村雨はそれを見て呟いた。飼い主達は村雨に礼を言ってその場を去って行った。
「よかったな、美由紀。優しい人に拾ってもらって」
「うん。これからは気をつけるわ」
遠くから二人の声が聞こえてくる。それを聞きながら彼は思った。
「優しい・・・・・・優しさのことか」
彼は博士に教えてもらった感情の一つについて考えた。
「人に何かとする。いや、させてもらう事。それはその人について色々と考える事から生ずる・・・・・・・・・」
彼は博士の言葉を心の中で反芻していた。
「そしてそれは人が人である為になくてはならないものだと・・・・・・・・・」
子犬が来た方を見た。彼の改造された目をもってしてももう彼等は見えない。だが彼は別のものを見ようとしていた。
「俺の知らなければいけない事はまだまだあるな」
彼はそう言うと車の中に入った。そして博士の横で休息を取った。
一文字と滝は食事を済ませ市内を回っていた。そして雑誌記者とカメラマンという滝は偽りの、一文字は本当の経歴を知って情報を収集していた。
「なんか思ったより情報の入りがいいな」
市内のホテルの一室で滝は一文字に言った。
「そうか?俺はそうは思わないが」
一文字はフィルムを見ながら不満そうに言った。どうも彼はいい写真があまりなくて不満らしい。
「まあそう言うなって。どうやら桜島の辺りに目撃例が多いし。それだけでも重要な手懸かりだぜ」
「確かにな。どうやら桜島に何かするつもりらしいな」
「おおかた大噴火でも起こさせるつもりなんだろう。連中がよくやる事だ」
滝が言った。彼もショッカー、ゲルショッカーと幾多の死闘を展開しているだけあって彼等のやり口には詳しい。
「だろうな。ゾル大佐がやろうとした事もあったしな」
一文字もそれに同意した。話しながらかっての宿敵との戦いを脳裏に思い出す。
「あの時は確か核爆弾を使おうとしていたな。今回はどんなやり方で来るかな」
「まあどんなやり方で来るかはまだ判らんが絶対に奴等の作戦を防がなくちゃな。さもないと九州南部が火の海だ」
桜島は大型の火山である。これが爆発した時の被害が甚大である事は容易に想像がつく。
「ああ、勿論だ。何としても奴等の作戦を阻止するぞ」
「よし」
二人はホテルを出た。
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