影の男
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事だ。食べるという事はとても楽しい事なんだ」
「楽しい・・・・・・」
「他にも色々とあるけどね。まあ今のもその一つだよ」
「そうか。今のこれが楽しいという感情なのか」
村雨は表情を変えず言った。
「そう、そしてそういった時は笑うんだ」
「笑う」
「そう、こういうふうにね」
博士はそう言うとその顔に満面の笑顔を作った。
「顔の筋肉の形を変えるのか」
「・・・・・・まあそうとも言うかな」
博士は少し寂しい顔になった。だがあえて笑顔に戻った。
「さあ君も笑ってみてくれ。私みたいに」
「ああ」
村雨はその頬を緩め目を細めた。そして笑顔を作ってみた。
「こうか」
その顔で博士に尋ねる。見れば実に爽やかな笑顔である。
「そうだ、その顔だよ」
博士は顔を崩して言った。
「いい顔をしているじゃないか。いいかい、今度から楽しいという感情を持ったら笑うんだ。解かったね」
「ああ」
村雨は覚えたばかりの笑顔で博士に答えた。
その時駐車場では数人の見るからに柄の悪そうな男達がいた。辺りをキョロキョロと見回しながら何かを物色しているようである。
「何かいいやつねえのかよ」
その中の一人の茶髪の男が言った。
「ああ、今日はしけてやがんな」
野球帽を逆の向きに被った男が相槌を打った。彼等はどうも車荒らしらしい。
彼等は駐車場を見回っている。その時ふと博士と村雨の乗っている軽トラが目に入った。
「何でえ、ボロい軽トラだな。こんだけ錆だらけでよく動くよな」
「ああ。けど見てみろよ、これ」
ヘルダイバーに目がいく。
「かなりいいバイクだぜ」
茶髪がニヤつきながら言った。
「そうだな、これは高く売れるぜ」
野球帽の男もそれに頷いた。
「おい、売るのかよ。勿体無えぜ。それよりも俺達で乗ろうぜ」
二人とは別の無精髭を生やした男が言った。
「そういえば御前バイクすきだったよな」
茶髪が言った。
「気持ちはわかるがちょっと待て。今時盗んだ車使ってたらすぐに足がついちまうぜ」
「そうそう、だから何食わぬ顔で売り飛ばすのが一番なんだよ。何、これだけのバイクだ。いい値で売れるぜ」
野球帽はニヤニヤしながら言った。
「そ、そうか・・・・・・」
髭の男は渋々ながらもそれに従った。
「じゃあ早速かっぱらっちまおうぜ。人が来ないうちに」
「ああ、じゃあ俺が見張りをしといてやるよ」
野球帽が残り他の者がヘルダイバーに飛び付いた。
「・・・・・・見れば見る程凄えマシンだな」
茶髪の男が銀に輝くボディを見ながら言った。
「ああ、何か無性に乗りたくなっちまったぜ」
髭の男が物欲しそうに言う。
「だから止めとけって。すぐに
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