影の男
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長崎市内を見渡せる丘の上にある。我が国の近代化に功績のあったイギリスの貿易商人グラバー氏が自身で設計し日本人の大工が建てた我が国最古の木造洋式建築物であるグラバー邸をはじめリンガー邸、オルト邸等の邸宅が立ち並んでいる。これ等の邸宅はどれも美しく見る人の目や心を楽しませ歴史の持つ深い味わいを教えてくれる。邸宅だけでなくこの長崎を舞台としたオペラ『蝶々夫人』のタイトルロールを当たり役とした我が国最初の国際的オペラ歌手三浦環の像やこのオペラの作曲者プッチーニの像もある。
この園は長崎にあるから当然坂も多い。その為エスカレータや歩く道も設けられている。
今この歴史と芸術を伝える美しい園に異形の者達がいた。黒い服に赤いマスクの戦闘員達である。
「本郷猛は来たか」
カメレオロイドはグラバー邸の前で戦闘員の一人に問うた。
「いえ、まだ見えておりません」
その戦闘員は敬礼をして答えた。
「そうか。時間はもうすぐだが」
「怖気づいたのではないでしょうか」
別の戦闘員が言った。
「そんな筈が無い。こちらには人質もいるし爆弾も仕掛けられている。来ない筈がない」
カメレオロイドは表情を変えずに言った。
「そう、人質だ。奴の性格からして助けに来ない筈がないのだ」
「そうなのですか」
「そうだ」
彼は邪な笑みを浮かべた。
「仮面ライダーという者達は人間が捕らえられているならば必ず助けに来る。たとえそれが一人であっても、死地に飛び込むと解かっていてもな。それが仮面ライダーという連中なのだ」
「わかりませんな。たった一人の人間の為に死地に飛び込もうとするなど。奴等は愚か者なのですか」
「愚か者か、確かにそうだな」
戦闘員のその言葉にカメレオロイドは別の種の笑みを浮かべた。他の者を見下した笑みだった。
「奴等は愚か者だ。我等に刃向かうな。だが一つ忘れてはならない事がある」
彼は顔から笑みを消した。
「それは?」
戦闘員が尋ねた。
「奴等により今までの全ての組織が壊滅させられている。これは事実だ」
「はっ・・・・・・・・・」
それを聞いて戦闘員達の態度が硬くなった。
「いいか、油断はするな。このグラバー園を奴の墓標とする為にな」
「はい・・・・・・」
戦闘員達は緊張した様子で答えた。
「奴は我々が倒す。そして我等が理想社会を築くのだ」
彼はそう言うと邸内に入った。戦闘員達はそれを敬礼で見送った。
ライダーはその時グラバー園の中にいた。緑の中に隠れるようにして進んでいる。
「まずは爆弾を探さなくては」
見たところ戦闘員達が槍を手に警護を固めている。その中でもオルト邸の辺りの警護が特に厳しい。
「あそこか」
緑の中からでる。そして邸の裏からそっと忍
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