TURN52 田中の苦境その九
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そのことを決めてそうしてだったのだ、田中に潜水艦を任せたのは。
「色々あったがこれでいい」
「太平洋軍潜水艦艦隊の創設ですね」
「それもなった。全ては整った」
「それでは」
ハワイ侵攻への準備は着々と進められていた。そしてその軸には田中がいた。
田中は潜水艦を率いることになり見事に立ち直った。これまでの威勢も戻っていた。
しかしミクロネシアの基地でこんなことを言い出していた。
「何かおかしいんだよな」
「何がじゃ?」
山本は彼の話を聞く。
「女でもできたか?」
「へっ、そうなったらいいんだけれどな」
つまり女ではないというのだ。
「生憎違うさ」
「では何じゃ」
「ああ、ちょっとな」
田中は微妙な顔になって山本に言う。
「基地で何か声が聞こえるんだよ」
「声?」
「ふよよ〜〜とか言ってな」
「ふむ。おかしな話じゃのう」
「そうだろ?妖精か?」
「かも知れんな」
山本もその可能性を否定しない。
「とにかくその声が聞こえるのじゃな」
「時々な。おかしいよな」
「少し調べてみるか」
「何だろうな」
こうした話もしていた。だが山本は太平洋からインド洋に転属することになった。そしてその際看護士の配属も変わった。
「何じゃ、ひとみちゃん転勤か」
「転勤といいますか」
古賀は山本に気恥ずかしそうに話す。
「提督になります」
「東郷にスカウトされたのか」
「そうなんです。どうも私には提督の適性があるらしくて」
「それでか」
「次の看護士も決まっていますので」
「ふむ、また美人さんであればよいのう」
「大島さんです」
古賀はこの名前を出した。
「あの娘ですが」
「おお、由布子ちゃんじゃな」
「御存知ですか」
「小柄なのがいいのう」
山本はその名前を聞いて嬉しそうに言う。
「しかもスタイルもいいし踊りもいける」
「そこはダンスです」
「おっと、そうじゃったな」
山本は古賀の指摘に右目をつむって応える。
「歳がばれてしまったわ」
「とにかくあの娘がお付の看護士になりましたので」
「ひとみちゃんとお別れなのは悲しいが由布子ちゃんもよいか」
「はい、ではお願いしますね」
「そうじゃな。ではひとみちゃんは早速か」
「ハワイ侵攻に参戦します」
本当に早速だった。ハワイ侵攻は間も無くだった。
「そうさせてもらいますので」
「頑張って来るのじゃぞ」
「私が力になればいいですが」
「いや、わしが見てもな」
山本は悪戯っぽく笑ってひとみに話す。
「ひとみちゃんには提督の資質があるな」
「だといいのですが」
「しかも何か隠し球がありそうじゃな」
「隠し球?」
「それがありそうじゃな」
言っている山本自身もそれが何かはわからない。しかも
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