TURN52 田中の苦境その八
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「よし、それならだ」
「新設する潜水艦艦隊の司令官に決まりですね」
「あいつに任せる」
こう秋山に言う。
「それでいいな」
「むしろ彼以外いないかと」
秋山は全てを見切った目で東郷に応えた。
「あれだけ潜水艦を使えるとなると」
「他にいないな」
「はい、まずは彼とです」
「〆羅提督だな」
東郷は彼女の名前も出した。
「あの娘にも任せたいが」
「それでは潜水艦艦隊は三つですね」
「エルミー提督と合わせてな」
それだけだというのだ。
「その三個艦隊で以てハワイに入ろう」
「はい、これまで潜水艦は一個艦隊でしたが」
「三個に増えた」
三倍だ、そしてその三倍をだった。
「どう生かすかでだ」
「ハワイでの戦いが決まりますね」
「まずは潜水艦だ」
東郷は言い切る。
「そしてさらにだ」
「さらにですね」
「あれも持って行く」
こうも言う東郷だった。
「それでいいな」
「はい、それでは」
「ハワイで勝たなければ話は終わりだ」
「そして話もはじまりませんね」
「ガメリカとの最初の決戦になる」
まさに天王山、その戦いであるというのだ。
そしてそれだけにだ、東郷は強く言うのだった。
「ハワイを陥落させれば選択肢が大いに増える」
「カナダもアラスカも攻められますし」
「全てはそれからだ。ではいいな」
「はい、ハワイでの戦いの用意を進めましょう」
「あいつは必要だ」
東郷は田中のことをここまで言った。
「この戦争において欠かせない人材だ」
「随分高く評価しているのですね」
「客観的な評価を下したつもりだが」
見れば東郷の表情はいつもと変わらない。飄々としたものだ。
しかしその飄々とした顔でこう言うのである。
「伊達に俺の地位を狙ってる訳じゃないだろう」
「確かに無鉄砲な人物ですが」
「優秀だな」
「そのことは確かです」
「優秀だがまだ若い」
東郷にはよくわかることだった。それも実に。
「その若さのせいでこれまではな」
「色々と失敗してきましたね」
「血気にはやっていつもやられてきた」
「戦果を挙げる時は大きいですが」
「失敗した時はな」
「その時はああした有様でした」
イザベラにいつもやられていたその時と同じくだというのだ。
「それが問題でしたが」
「そうだな。だが」
「それでもですね」
「得難い逸材だからな」
「だから提督にも選ばれたのですね」
「少なくとも人を見る目はあるつもりだからな」
東郷は笑って話した。
「ああした損害の多さも想定済みだった」
「だった、ですか」
「問題はどの艦艇に向いているか向いていないかだった」
「しかし潜水艦を手に入れた今は」
「任せられる」
戦局の重要な場面、そこをだというのだ
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