TURN52 田中の苦境その七
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見ればその顔は真面目なものに戻っている。忠臣から良臣になろうとしている、今の彼女の顔はそうしたものだ。その顔での言葉だ。
「では田中さん、今回は」
「ああ、宜しく頼むな」
「少し厳しい訓練になりますがいいですか?」
「びしびしやってくれよ」
田中も笑顔でエルミーの言葉に応える。
「俺は絶対にあいつを越えないといけないからな」
「東郷さんをですか」
「ああ、絶対に総長、いや長官になってやるからな」
「では」
「ああ、頼むな」
こうして田中はエルミーから潜水艦のことを一から百まで教えてもらうことになった。エルミーも懸命に教える、それはかなり多かった。
田中は頭で覚えるタイプではない、身体で覚える。それは潜水艦についても同じだった。
「よし、接近してだな!」
「その際隠密性に気をつけて下さい」
「そうしてだよな」
「敵の至近距離に近付けば」
まさにその時だと、エルミーも言う。
「後は駆逐艦と同じです」
「魚雷を放ってだよな」
「そして離脱します」
「その際だけれどあれだよな」
「勿論隠れたままです」
エルミーもこのことを言うのを忘れない。
「確認は潜望鏡でお願いします」
「だよな。つまり潜水艦はあれだな」
実際に潜望鏡から目標を見ながら言う田中だった。
「隠れている駆逐艦だよな」
「そうなります」
「そうだな。ただな」
「ただ?」
「駆逐艦は速いけれどな」
その速度も武器だ。駆逐艦は高速移動と運動性能を使って戦うものだ。
だが潜水艦はどうか、田中は実際に操艦をしてみて言う。
「まるでドン亀だな」
「そうですね。隠密性を重視していますので」
「速さはなんだな」
「それは犠牲になっています」
エルミーもこのことを説明する。
「そのことはお気をつけ下さい」
「だよな。本当に隠れてなんだな」
「ですから潜水艦の中は必要最低限のものしかありません」
実際に今彼等が乗っている試作型潜水艦も食堂の椅子の中なり天井なりに食材を詰め込んでいる程度だ。ありったけの空間を利用して詰め込んでいる。
二人が今いる艦橋も同じだ。とかく狭い。
その狭い中で潜望鏡で目標を覗きながらまた言う田中だった。
「だよな。生活環境はな」
「お世辞にもいいものではないです」
「そうだな。けれどこういうのもな」
「大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だぜ」
田中はそうだというのだ。
「だから心配無用だぜ」
「田中さんは生活環境は問題にならないですか」
「軍人だからな」
それでだというのだ。
「そうしたことはな」
「潜水艦適正を持っている方はかなり限られますので
「俺は向いてるんだな」
「その様ですね。では」
「ああ、あの目標もな」
もう廃棄する艦艇だ。それをだ
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