第1話 ”逸脱”の火曜日
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」
その言葉を最後に、鳥居純吾は、世界から、“消えた”。
冬の寒空の下、妙にざわめいている森の中を、一人の少女が歩いている。
風が強いのか、木々の葉ずれがいつもより強い。ざわざわざわざわという、木の葉のこすれる音が少女の耳を叩く。動物たちも騒がしい。鳥の羽ばたき、小動物たちがあげる不安そうな声。まるで冬眠を忘れたかのようだ。
それに……、普段の森ではまずしない、あまり自分にとってかぎたくない匂い。それが奥に行けばいくほど強くなってくる。
肌で感じられるほどに違和感を覚える森の様子。その原因は彼女がここへ来た理由である、空から降りてきた青い焔だろう。
たまたま窓から見ていた彼女は、その光景にひどく興味を覚えた。ゆらゆらと青い焔が、森の中へ降りていく光景。
それが彼女には、まるで自分が好んで読んでいるおとぎ話に登場する神や悪魔、そんなおとぎ話の住人がこの世界へ降り立ったかのような光景のように思えた。
少女の愛らしい口から、白い息が短い間隔で吐かれる。普段からこの森を歩きなれている彼女には、もうすぐ目的の場所につく事が分かる。だんだんと緊張の水位が上がっていき、息を吐く感覚が短くなってきた。
息を吸うのと同時に飛び込んでくるあの匂いの濃さも増してきている。少女の目的地まであと少しという所へ彼女は来ていた。
やがて左右の樹が途切れ、視界が開ける。少女が辿り着いたのは森の中心にほど近い、広場のような場所である。
まず左右を見回す少女。何本もの木々が重なり合ってその広場を構成している事が分かるが、後は普段と比べて木々が騒がしいくらいで何も異常はない。次に、中央。
と、その瞬間普段とは明らかな違いを広場の中央に見出し、目の前の光景に思わず悲鳴が口からついて出てきた。
「だ、大丈夫ですか!?」
目の前には、一人の“少年”が倒れていた。ひどい手傷を負っているらしい、黒い上着を着ているが、そこかしろ破れ血がにじんでいる。顔はニット帽で隠れて見えないが、白い息がかすかに上がっているのが見える。まだ間に合う、早く治療を!
「と、とにかくお姉ちゃんたちに知らせないと!」
少女?――月村すずかは携帯電話を取り出し、家にいるだろう姉たちに急いで連絡をとった。
「・・・それで、“彼”がその炎の正体だった、と。」
月村忍は自分の妹であるすずかに確認をとる。それにすずかが頷いて答える。
あの後、事情を知った姉がメイドのノエルとファリンを連れ少年を家に運び、応急手当をほどこした。今しがたできることは全て終わり、こうしてより詳しい事情を聴く流れとなったのである。
「まぁ、結果としては人助けになって良かったけど。おかしい、って感じた森の中に連絡もなしに入って
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