第一話 通りすがりのお義兄(にい)さんだよ
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っくり男の前まで歩み寄った。男を上から見下ろす形となる。
「最初で最後だ。二度とこんな馬鹿やらないと誓え。でないと、」
月日は担いだ散弾銃で肩をトントン、と叩き。
「後悔させる」
最後を強調するように警告。男は激しく首を縦に振る。どうやら解ってくれたようだ。
そこで遠くからサイレンの音が聞こえた。どうやら銃声を聞いた誰かが警備員に通報したらしい。
「時間がない。お前さん方も警備員に厄介になるのは嫌だろ?さっさとあのデカイ人連れて帰れ。“三人で”」
「シっ?」
何を言っているんだ?と思ったその時、後ろと足元から小さな呻き声が聞こえ、そちらに目をやる。
二人の男が動いた。
「生きてるよ。当たり前だろ?死んだらやり直せないからさ」
男から離れていく月日は倒れている男子学生を背追い上げた。その細身からは想像できないほど軽々と。
「捕まるなよ?」
そう言い残し、月日は女子学生の手を掴んで路地裏の闇へと消える。
男は悟った。これが正解者たる自分への『全員見逃す』という褒美であることを。
そして男の記憶にはすれ違い様に目に飛び込んできた“鮮やかな緋色”の腕章が刻まれた。
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