文字の語り合い
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少女、シェイクスピアは無傷のままである。
何もおかしなところはない。
攻撃を受けたはずなのに、何のおかしなところがないという異常以外は。
「面白い術式だね、それ」
「……僕は今の君に興味があるけどね」
「興味がある事は良い事だと僕は思うよ? ───何事も、無い状態からは生まれないからね。物も感情も、ね」
視線にはさっきまでの外界への拒否の念は籠っていない。
感情が籠っている。
敵意とも好意とも微妙に似ているようでいて、似ていないような何かがある、とネシンバラは思う。
つまり、相対されているという事である。
「じゃあ、始めようか。作家同士って言っとくよ。お互い、表現を求め合う仲だ。互いの出来を話し合おうよ───文字は等しく僕達を判断してくれるよ」
「……Jud.でも、その前に頼みたいことがあるんだけど」
「ん? 何だい。手早くね」
ああ、と一息を吐き、真剣な顔で少女の顔を見つめ
「サインをくれないかな? 出来れば、そっちにいるベン・ジョンソンの方も」
言葉と同時にネシンバラの周りに大量の表示枠が浮かび、そのすべてに同じ言葉は書いてあった。
『……ふぅ』
「せ、せめてコメントを書くのが礼儀ってもんじゃないのかい!? 大体! 僕みたいな歴史好きはこういう襲名者と会うとはしゃぐんだよ!?」
『お? ミトっつぁんとホライゾンを遠慮なく差別した発言がついに出たよ!』
『別に気にしませんが……それでも、ホライゾンが起きたら何が起きるか楽しみですわねぇ……』
「くっ……!」
いや、待て。
僕の相手はこの外道達ではない。
というか、こんな外道共を相手して堪るか。
今は、そう。今、相手をすべきは小説家として偉大な先達を襲名している少女の方だ。
だから、僕は大量にある表示枠を無視して顔に手を当てて、敢えて、彼女からは左半身になる様なポージングを取り、残った手で、彼女を指さし
「───どうだい!?」
返答は突然の光であった。
その微妙に真面目じゃない光景を見て、浅間は半目になりながらも、一応心配した。
「……大丈夫でしょうか、ネシンバラ君───脳が」
「フフフ、最後に付けた語句に関してはともかく、それ以外は何とかするでしょ。浅間も信じていないわけじゃないんでしょ」
「……よくある文句ですけど、その言い方って言われてみたら超卑怯な言葉ですよね」
心配の一言は信じていないという事になってしまうのである。
あんまり好きな文句ではない。
信じていないわけでない。
だが、やはり、信頼しても心配という感情は付いて回ってしまうので、気をつけなきゃとは思うのだが、培ってきた性格はやはり、中々治らない。
これか
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