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不可能男との約束
文字の語り合い
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んの……遅ぇなぁ」







《風は遊び、故に矢は静かに地面に落ちた》

絶体絶命の四文字熟語を前に起きた事はささやかな変化であった。
落ちていくという当たり前の力を味方にした矢は途端に軽やかな動きで、まるで風に遊ばれる髪のように地面にただ落ちて行った。
重さは風に遊ばれることによって、力が抜けたという感じに。
そんな力を持っている人物はこの場にいない。
なら

「ああ……」

シェイクスピアが息を吐く。
その息に、どういう意味があるのかは誰も理解していないし、余裕もない。
ただ、彼女は新たに来た人物に対して息を吐いた。
新たに来た人物は幾つの通神文を宙に浮かべ、荒れた呼吸で、しかし、意志を込めて己の名を告げた。

「武蔵アリアダスト教導院、書記、トゥーサン・ネシンバラ。短い間だけど、よろしくって言えばいいかな?」






新たに表れた武蔵書記。
しかし、その息が荒くなっているのを見てダッドリーは私達と同じで文系の人間だと思った。
しかし、ジョンソンは除くだが。
だが

《彼の息は徐々に、しかし、確実に静まり、位置は確かに見据えた相手に近付いていく》

動きが緩やかだ。
セシルの荷重術式はちゃんと発動している。
例外は、女王の盾符のみであり、それ以外の武蔵勢にはちゃんと全員にかかっている。
だが、よく見るとネシンバラという少年の頭上や肩辺りから流体の青白い光が行く度も散っているのが見えた。
季節外れの六花が散るのを見て、答えを思い浮かべる。

……セシルの荷重を破っているのね。

術式だ。
恐らく、神道の術式。
見たところ、何らかの文系の術式だろう。
書記がアグレッシブな攻撃系術式を使ってきても困る。
そんな脳筋は私以外の副長で十分である。

《時間は残り三十秒を切った。見せ場としては十分だ。だから、彼は自分の意志を示すための位置に着き、気を吐く》

「すまない……遅れた。まぁ、文系なもんでね───人並みレベルの足の速さしかないんだよ」

ギシッと床が軋む音が聞こえる。
はっ、と音が聞こえた方を見ると、そこにはシェイクスピアが立ち上がり、そして、こっちが不利になっても本を顔から離さなかったのに、その本は手に提げられている。

……この自己中娘が自分から……!?

そして、言葉を吐こうとしたのか、何かをしようとしたのか、解る前に武蔵書記が先に動いた。







「悪いね」

ネシンバラは立ち上がり、何かをしようとしたシェイクスピアに対して文字を叩きつけた。

《立ち上がり、何かを為そうとしていた敵は、果たせぬまま地に崩れ落ちる》

《己にかかっていた荷重を、分解保管し、敵として相手に叩きつけたからだ》

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