蛇足三部作
『最後は隣に並んで歩こう』
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くれるのか?」
返事は無かった。
そのかわり私の体を抱き留めている片腕の力が増したのに気付いて、どうしてだか無性に泣きたくなった。
******
「――ナルト! 私はこいつを連れて逝く! あの仮面の男は任せたぞ!」
「初ねーちゃん! 待つってばよ!!」
不意にこちらに背を向けたまま、その人はナルトの名を叫んだ。
強い意思と決意の込められた声。決して届かないと分かっているのにナルトは思わず手を伸ばす。
――マダラと柱間。
二人の周囲を見た事の無い文様が円陣を描いて、儚い輝きの緑色の光を放つ。
薄い硝子と瑠璃がかち合う響きが周囲に響き渡り、彼方より届く透き通った音色は人々の鼓膜を振動させた。
抱きかかえられる姿勢で、こちらに背を向けているその人の顔は明らかではない。
その半身は既に灰と化し、長い黒髪がその横顔を隠す様に風に吹かれて、軽やかに踊っているのが目に映るのみ。
けれども見えないその表情は、ひょっとしたら微笑みを浮かべているのではないかと、ナルトは思ってしまった。
「じゃあな、ナルト! これで、お別れだ――この戦争、勝てよ!」
「ねーちゃん!!」
そうして伸ばされたナルトの手の先で、一際強い光が迸って、その場に居た者達の目を眩ませる。
輝きの失せた後には、光の中心にいた二人の姿はどこにもなく――ただ砕かれた大地と周囲に群生する木々の残骸にそれらを這う燠火のみが、彼らがこの場にいた事への証明として残っていた。
*****
――蛍の光に似た輝きが時折瞬く以外何も無い真っ暗な道を、二人の男女が並んで歩いていた。
女の方は男の手首を掴み軽やかな足取りで踊る様に歩を進めており、男の方は不機嫌そうな表情を浮かべながらもその手を振り払う様な真似はしない。
それまで無言で歩いていた女が、不意に口を開く。足取り同様に軽やかな声音が、静かな空間に?溂と響き渡った。
「久しぶりだなぁ。大分待たせちゃったから、きっと扉間やミトが怒ってるんだろうなぁ。どこで道草して来たんですか! って」
「……ふん。そうは言いつつ、ちっとも反省していないだろう、貴様」
「そりゃあ、あれだけ面白い戦いをしたらそんな事忘れちゃうよ。だから、もし怒られたらマダラも一緒に謝ってね」
「断る。貴様だけで充分だろう」
つれなく断られて、女は悄然と肩を落とす。
それでも直ぐさま立ち直ると、掴んだ男の腕をぶんぶんと振り回した。
「マダラ、マダラ」
「――……なんだ」
「一緒に付いて来てくれて、ありがとうな」
「別に。輪廻天生でないのであれば、オレの目的は果たせないからな。……それに術者の男の思い通りにしてやるのは気に食わなかっただけだ」
捻くれた台詞でも、
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