蛇足三部作
『最後は隣に並んで歩こう』
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その光景を何ともなしに眺めながら、ただ淡々と言葉を紡ぐに留めた。
「なんというか、わかっちゃったんだよなぁ」
「…………なにがだ」
「お前が今やろうとしている事と、私が昔やった事は……手段こそ違うけど、根っこの部分は、果たそうとしている目的は、同じだって」
叶えたかったのは、欲しかったのは、誰かが傷つく事の無い“平和な世界”。
殺し合うのも、殺すのも、殺されるのも、嫌だった。
これ以上大事な人を、大事な物を失いたくなくて――そのために起こした行動こそが私の始まりだった。
強制的に被術者達を幻術世界へと導くのだという『月の眼計画』
その大幻術の世界に行けば、全てが満たされるが故に――苦しむ事も、悲しむ事も、辛いと感じる事も無いのだと言う。
まやかしの平和かもしれない――それでもそうでもしなければ、救われない心もあるのだろう。
同時にそこまでしなければ救われないと思い詰めなければ成らない程――この仇敵は自らを追い込んでいたのかもしれない。
理解できるからこそ、頭ごなしに否定など出来ない。
手段としては強引極まり無い物だったとしても、その思いや考え方自体が間違っているとは思えないから。
「きっと、ナル君達は否定するだろう。お前のやろうとしている事は間違っているって」
「――……それはある意味では『正解』ではあるな」
うん、そうだろうね。そして同時に、ある意味において彼らのその『否定』とて、誤りであるのだろう。
マダラの言っている事は残酷なまでに正しい――“永遠の平和”なんて代物が訪れないという事なんて、私とて身に沁みて理解している。更にそのための手段としての『月の眼計画』が、現状最も有効的な代物であるということも分かっている……だから。
――――だからこそ、私は何も言わないでおこうと決めたのだ。
「……ん。そう言う訳で、オレはお前の考え自体を、否定するつもりは……無いよ」
「――……そうか」
「そうだよ」
否定はしないが、かといって全面的に肯定する訳でもない。
マダラの言っていることは正しい――けど、それは本当の意味で正しい答えではないのだということも私は識っている。
――そう言う訳なので、何故だか苛立ち始めた好敵手殿にもこれだけは告げておこうじゃないか、と口を開いた。
「まあ、あの子達には是非とも偽物ではない“本当の平和”を手に入れてもらうつもりだがね」
そうやって敢えて堂々とした態度で応じてみせてやれば、周囲に漂っていた怒気は霧散し、相手の皮肉を刻んだ口元が奇妙に歪む。
全く。相も変わらず、ひねくれ者だ。
「――――平和な世界など、来るはずが無かろう」
「分からないぜ? オレやお前が生きていた時代と、この時代は……
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