蛇足三部作
『最後は隣に並んで歩こう』
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腕に力を込めて、固く両目を瞑った。
結局、今も昔も自分の手が届いたと思った瞬間に掴み損ねるなんて、鼬ごっこもいいところだ。
胸の奥でグチャグチャとした感情が入り混じる。抑え切れないその心に蓋をする様に、奴の体に触れている腕に力を込めれば、奴が小さな吐息を零した音が耳に届いた。
「――なら、一緒に行くか?」
そうして囁く様に告げられた言葉に、思わず目を見張った。
*****
ずっと前から次に死ぬ時というか消える時は、今度こそ己の痕跡を何も残さずに逝こうと決めていた。
だからこそ新たに得た己の肉体が崩壊を始める時は同時に細胞の一つ一つに至るまで灰と化す様にと、術を掛けていたのだ。
マダラとの死闘を繰り広げて――そして。
紫のチャクラを帯びたあいつの腕が私の胸に突き刺さった瞬間、その術は発動した。
心臓を一息に貫いた最後の一撃のせいで仕掛けていた術が作動し、徐々に灰と化していく私の躯。
即死しても可笑しくない攻撃を浴びたにも関わらず、私の意識がこうしてはっきりとあるのは、私が一度は死んだ身であり、今の体が正規の物でない事が原因なのだろう。
ああでも、自分で決めた事だけども、緩慢に迫り来る消失のタイムリミットはかなり心臓に悪いものだなぁ……。
そんな事をつらつらと考え込んでいれば、すぐ側から声がかけられた。
「…………聞きたいことがある」
「――ん? なんだ?」
何と言うか、こいつは相変わらず気難しそうな顔をしているなぁ。
目の前で眉間の間にきつく皺を寄せている姿は、何だかとっても苦しそうだった。
「――何故」
「……ん?」
「貴様は何故、他の奴等の様に『月の眼計画』をなそうとするオレ達を否定しなかった?」
マダラの方も否定される事を前提として進めていた計画だったようだったから、私が『月の眼計画』に対して何の感想も、拒絶の言葉も告げなかったのは意外だったのだろうか。
「意外に……思ったのか?」
「それなりに。理想主義者である貴様の同意を得られるような策ではないのは、百も承知だったからな」
諦めた様な色を宿した赤い瞳と視線を合わせる事が辛くて、そっと視線を伏せる。
誰よりも不遜で、誰よりも誇り高く、傲然と振る舞っていた好敵手の姿を知るからこそ今の姿は痛々しくて――見ていられなかった。
常に現実を見据え、一族のためにと心を押し殺し続けてきたマダラであったからこそ、その思考の果てである『月の眼計画』は哀しい。
「そりゃあ、お前の考え出した『月の眼計画』は諸手を挙げて賛成できるようなものではないと……思っているよ? ――でも、それ以上になぁ……」
地面へと滴り落ちていく赤い雫が、私が見つめる中で灰と化して風に攫われていく。
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