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王道を走れば:幻想にて
第四章、その5の1:気づかぬうちに
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・」
「また?」
「はい・・・皆で、ちょっと軽い仕返ししたんですけど・・・こいつのお父さんがそれをチクって・・・。そしたら衛兵さんが、『これは折檻だ』って、これを・・・」

 そう言って少年は己の服の袖を捲くり、それを見てキーラは思わず泣きたくなる思いになった。少年の若々しかった二の腕の部分の肌が、焼けて赤黒く変色している。焼きごてでも押されたのであろうか。キーラが知っている子供への懲罰とはかけ離れたものであった。

(酷過ぎるよ・・・なんでこんな事するの?でも、どうしよう・・・私の対処できる範囲を越えてるよ、これって・・・)
「だから、その、僕達を匿って下さい。ほんの少しの間でいいんです。あいつのお父さんが、狩りで居なくなるまでの間でいいですから」
「狩猟・・・冬に備えて、獣を狩るのね?」
「ううん、それは狩人さんの仕事。お父さんが居なくなるのは、魔獣を狩るため」
「魔獣?」

 思わず毀れた言葉に、キーラは己の職責を思い出した。

「ね、お前の家もそうなんだろ?」
「うん。あの、なんだっけ、そうだあのでかい山に行くんだ。結構近いよね?」
「近くじゃないよ遠くの方だって。だって白の峰だろ?俺父さんに聞いたんだけどね、なんかね、賢人様の命令だからって言っていたよ」
「賢人・・・?」

 更に呟かれた言葉に、キーラは政治の匂いを嗅ぎ付ける。唇を指で隠して考え込む。
 
(奇妙ね、魔獣の駆除なんて・・・。子供達の話が嘘にも思えないし、私に嘘を吐こうとするようにも思えない。きっと本当の話なんでしょうね。
 ならどうしてこの時期に出兵なのかしら?第一魔獣なんてエルフ領内でもそれなりに駆除されているんでしょ?村や住居に近い場所に魔獣が出ない以上、遠くの方に出兵する意味や必要性があるの?それも白の峰って、かなり遠方じゃない。ちょっとやそっとの勇気で行ける場所じゃない。・・・何か裏がありそうね、この話)

 キーラがそこまで思慮を回していると、ふと己に注がれていた子供らの視線に気付いた。不安げに問うてくる。 

「ねぇ、泊まってもいい?」
「・・・いいわ。でもお父さんやお母さんにはどう言い訳するの?」
「それは・・・」
「・・・分かった。じゃぁこう伝えなさい。『王国からやって来た人間のお姉さんの所で、いっぱい御勉強したいです。だから、暫くあの人の所へ行ってもいいですか』って」
「・・・大丈夫かな?」
「もし御両親がきつい顔をしたり、反対したらこう言いなさい。『調停官様が、エルフと仲良くしたいから』って。そうすれば、きっと賢い御両親は手を引いてくれるわよ」
「本当に?」
「うん。なんたって調停官様、エルフの一番偉い人と仲良しなんだからね」

 キーラが言った言葉には事実と相反する嘘が混じっている。即ち、別
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