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王道を走れば:幻想にて
第四章、その5の1:気づかぬうちに
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受けちゃうわよ?悪い人と一緒にいちゃいけませんって。だから早く帰りなさい」
「嫌ですっ、ここに居たい・・・」

 子供達の瞳に哀願を見て、キーラは出掛かった言葉を飲み込む。逡巡の後、キーラは溜息混じりに妥協する。

「皆、其処に座りなさい。今御茶を出すから」

 子供らは藁椅子にぺたぺたと座り、安心したように目を交わしてお喋りをし始めた。キーラは奥の方へと行き、人数分のカップと御茶を用意する。

(はぁ、困ったなぁ・・・。どうすればいいんだろう・・・)

 心中に溜息を零し、カップに湯気上るハーブティーを注いでいく。円やかな味わいで男女と年齢問わずに人気である、クウィス領内の茶葉だ。注ぐと薄い黄緑色の水面が浮かぶのが特徴である。
 盆にカップを載せてキーラは戻っていく。子供らが彼女を見て会話を止めたのが、微妙にショックであった。

「はい、ハーブティー。お腹がぽかぽかするよ」
「・・・僕、冷たいのがいい」
「苦いの、ぃや」
「と、とても美味しいわよ。ほら、私だって大好きなんだから」

 遠慮の無い言葉にかちんときながらキーラは子供らの前と自分の前にカップを置いた。誰もそれに手をつけず、キーラだけがそれを飲むのが更にショックであった。

「そ、それで、どうして皆此処に来たのかな?戻るのは嫌だって言ってたよね?」
『・・・』
「あ、あのね、別に難しい事を聞きたいわけじゃないの。ただね、私も皆が何の理由も無く、此処に来てるのがちょっと不思議なんだ。だからもしできれば、此処に来た理由を教えてくれると、私も助かるんだけど・・・だめかな?」
「・・・・・・お父さんが怖いから」
「・・・そ、そっかぁ、お父さん怖いかぁー」
「怖い。棒で僕を叩くんです」
「・・・」

 思わず聞いた言葉にキーラは絶句して閉口する。彼女の戸惑いに気付いたのか、それを言った少年が言う。

「この前も怖かった。礼儀がなってないって、水桶に頭を突っ込まされた。あと、勉強が出来てないからって、お腹を殴られた」
「酷い・・・それって普通じゃないよ?」
「分かってます。こいつの家はちょっと変なんです。こいつのお父さん、滅茶苦茶怒っちゃうと胸を抑えてひくひくするんです。息も苦しくなっちゃうみたいで・・・」

 子供らの中で一番年上であろう、灰色の髪をしたエルフが言う。それに続いて皆が次々と言う。

「絶対腹いせだよ、あれ。怒らせないようにって気を遣ってるからあいつ、調子に乗って直ぐ殴ってくるんだ」
「そうだよ、直ぐに怒るし、蹴ってくるし。あんなの大人じゃないよ!」
「仕返ししようよ。僕達もなんとかしないと、あいつずっとあのままだよ?」
「でも怖いよ・・・。あの人、怖い衛兵さんと御友達なんだよ?仕返ししたら、また何かされちゃう・・
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