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王道を走れば:幻想にて
第四章、その5の1:気づかぬうちに
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サの助言はできれば欲しいものであったからだ。
 更に不運な事に、ここに居ないのはアリッサだけではない。

「リタさんは食事の準備だし、リコ君はまた測量だし・・・。私こんなに暇でいいのかなぁ・・・」

 立場上、兵士に聞くわけにもいかない。「私、何をすればいいですか」などとは。誰も彼女に奮起を促す事は無い。動くための原動力は自分自身の活力のみであった。

(駄目駄目っ。マイナス思考は駄目だって!ケイタクさんを見習わなきゃっ・・・。いつだって前向きに!家族のためでしょ、キーラ!)

 キーラは両頬を軽くぱちんと叩いて目を覚まし、頭に澄み切った水をイメージさせる。心を落ち着かせ、勉学に励む際にはいつもこの想像が彼女の役に立っていた。

(・・・そういえば、文献貰ったんだっけ)

 そのイメージは図らずも、彼女に文献の存在を告げてくれたようだ。キーラは部屋の本棚に足を運び、数冊を適当に掴んで机に置き、ぺらぺらと捲っていた。そして眉をぎゅっと顰めた。

「・・・やだ、全部昔のエルフ文字?ちょっとしか分からないよ・・・」

 まるで常夜を這いずるミミズである。理解してしまう自分自身の知識が恨めしかった。頭を無性に掻きたくなる思いでキーラはそれを読み飛ばし、次の本を、そして次の本を捲っていく。
 二時間後、六冊目にして漸く、彼女は捲る手を止めた。

「・・・怖い絵・・・『ヴォレンドの惨劇』、か」

 エルフの昔語りを説いた本であった。女が針山へと突き落とされ、巨大な赤い目がそれを無表情に見下ろす絵である。キーラはそれを見て嫌そうに目を瞑ってページを捲り、再び手を止めた。

(あれ?このアミュレット、どこかで見たような・・・?)

 彼女が見たものとは、一体の骸骨を取り囲む三つの道具の絵である。文章から解釈するにその骸骨はかなり昔の偉人、それも高貴な身分の者であると分かった。彼女が特に目を惹かれたのは道具の一つ、アミュレットだ。その形状とよく似たものを、王都のどこかで見た記憶が有るのである。それも誰か、身近な人物が付けていたような気がする。
 途端、『どかどか』と、速足に入り戸に近付く足音が聞こえた。

「!だ、誰?」

 思わず叫んで、キーラは傍の武器棚にある剣にそっと目を走らせた。だがその音が入ってくるのと同時に警戒は直ぐに消え、代わりに疑問と驚きが生まれる。入ってきた足音とは即ち、エルフの子供達のものであったのだ。

「あ、貴方達!こんな所に来ちゃ駄目でしょ?お父さんやお母さんにバレたら大変だよ!」
「・・・・・・戻るのは嫌ですから」
「うん、やだ」
「で、でも貴方達はエルフで、私は人間よ。私達は貴方達の御両親や、この森を治める偉い人にも嫌われている。そんな人と一緒に居たら、きっと貴方達、御説教を
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