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王道を走れば:幻想にて
第四章、その5の1:気づかぬうちに
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んてどうでもいいんです。会談をしたっていう事実が一番欲しいんですから。賢人を除け者扱いなんて」
「分かっておる。外交的に拙いのだろう?」
「そうそうそうそう」

 歩きながら慧卓は周囲を見渡す。中世の田舎の村とはかくの如きであるべし、といった感じのありふれた農村であった。屋敷に近付くにつれて家々が目立っており、エルフの姿もぼちぼちと見掛ける。
 慧卓は後ろからここまで案内してくれた少年エルフに声を掛けた。

「此処までありがとな、少年」
「・・・」
「ははは・・・もっとお話しようぜ?」

 無愛想なままの少年に微苦笑を浮かべながら、慧卓は周囲からちらほらと感じつつある好奇の視線に、カリカリと頬をかいた。タイガの森、いやそれ以上に敵意にある視線であった。鍬を持った農夫など、今にも殺さんばかりの視線であった。関わらない方が身のためであろう。
 屋敷の前に辿り着くと、衛兵が警戒を顕にして横柄な口振りで言う。

「止まれ。貴様らは何の用があって此処に来た」
「我等は王国より参った北嶺調停団補佐役の一行である。賢人殿との面会を求めたい」
「調停団・・・ああ、そういえば話が来ていたな。入るがよい。賢人様はお待ちであられる」
「心遣い、感謝する。では、早速入るとしようぞ」
「用があるのは補佐役殿のみだ。他はここで待て」
「・・・ケイタク殿」

 衛兵がきょとんとした顔をした。目の前に立つ精悍な男が補佐役だと思ったらしく、慧卓を見て完全に舐め切った目つきをした。

「私は調停官補佐役だ。通してもらおう」
「若造が?・・・・・・まぁよかろう。くれぐれも賢人殿の機嫌を損ねるような真似はしないでいただこう」
「御親切にどうも。忠言、痛み入るよ」

 皮肉っぽく言っても流されるだけでである。慧卓は鉄面皮で門より通され、屋敷へと向かう。残されたパウリナは天を仰いで、当ても無さそうに飛んでいる野鳥の群れを見遣った。

「・・・ここは畑と鳥ばっか。つまらないですね、御主人」
「・・・臭うな」
「えっ・・・私そんなにきつかったかな・・・でも水浴びしてないからなぁ」
「お前じゃないわ」

 ユミルは冷ややかに突っ込みつつ、どうにも胸に蟠る一縷の不安のようなものを拭えないで居た。具体性を帯びぬものであったが、まるで虫の知らせのように燻っている。余りいいものでは無さそうだと思いつつ、どしんと身構える屋敷を振り返った。
 屋敷へと通された慧卓は玄関の扉が閉められるのを聞く。やがて執事らしき男がやってきた。

「・・・来い、キ=ジェ様がお待ちだ」

 階段を登って二階へと登り、左側の通路へと通される。男が通路半ばにある扉の前で止まり、その戸を開けて慧卓を通すと直ぐに戸を閉めた。
 そこで慧卓は漸く目的の人物と相見える。樫
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