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王道を走れば:幻想にて
第四章、その4の2:布石
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 エルフ領内に入って三日目となった。ここでの朝は常以上の緊張感をもって当たらねばならない。何故なら余りに日の光が穏やかで、体を包む毛布も気温も暖かであるがため、ついついと眠くなってしまうからだ。季節の移り変わりも無視して二度寝の危険が付き纏うのは必定である。
 よって慧卓は今日は顔に自分で紅葉を張って漸く起きたのである。なるべく早い内から済まして起きたい事があったのだ。それは煌びやかな木漏れ日が届く、タイガの森と呼ばれるエルフ居住区域の外れの方で行われていた。

「そこ、もう少し右側に立って下さい」
「ここか?」
「はい、そこです・・・。棒もちゃんと立たせて」
「ああ、こうだな」
「・・・はい、大丈夫です。じゃぁ次はその奥の切り株でお願いします」
「うん?・・・あ、あれか」

 茶褐色の固い絨毯を踏みながら慧卓は歩き、慧卓は指示されたとおりに脛半ば程度の高さの切り株の近くで止まり、真っ直ぐとした木の棒を垂直に立たせる。それを声の届く距離に居たリコが、手に持った木の板にすらすらとナイフで文字を彫っていく。簡単な計算式であり、地形の正確な把握には欠かせぬ事であった。

「・・・はい、大丈夫です。これで数字が出ます」
「あいよー!」

 二人が行っている事は即ち、エルフ領内での土地の測量。前日にイル=フードからの許可を行動である。最もらしい言い訳を告げて駄目元で頼み込んだのが、一昨日の事に負い目を感じてくれてたのか最終的には折れてくれた。だからこうして何の横槍もなく、昼近くまで測量を行えるというものである。

「で、やっぱり地図は不正確だったろ?」
「ええ、そうなんですけど・・・なんで、分かったんですか?」
「渡された時、エルフの衛兵が軽くほくそ笑んでたの見てな、ピンときたんだよ。『あっ、これは何か企んでるな』って。それで昨日実際に自分の足で調べてみたら、その地図と実際の地形が符合していないのに気付いたんだ」
「す、凄いです。よくそんなの分かりますね?」
「いやぁ、ただの直感だったんだけどな!当たってラッキー、ってくらいだよ。ま、衛兵さんにしちゃそれで分かる地図かもしれんけどな」
「・・・確かに普段から此処に居住しているエルフが使用するなら、これも地図といえます。地形や目印は結構はっきりしてますし・・・。でも僕にはどうも、これは地図ではなく、風景画のような感じがするんです」
「もっと言うと、悪戯書きか?」
「いえ、そこまでは言えませんけど・・・」

 二人が顔を突き合わせて覗き込む地図は、まるでフレスコ画のような抽象的で脚色が強い絵が描かれた代物であった。タイガの森を中心に周辺地域を記しているらしいが、直上からではなく斜めに見下ろす感じで記されているため、読むだけでは距離感覚が掴み難いものであった。実際に軽く
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