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王道を走れば:幻想にて
第四章、その4の2:布石
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、閣下!これはっーーー」
「ケイタク殿、申し訳無い。我が部下が無礼を働いたようだ」
「閣下っ・・・」
「・・・何をしておる、構えを解かんか」

 男らは不承不承といった顔で槍の矛先を正していく。一縷の安堵を慧卓が抱く一方、慧卓に詰め寄った男は確かめるように尋ねる。
 
「ほ、本当なのですか、閣下?彼らにこの土地の測量をしてもいいと、許可を出したのはっ」
「ああ、事実だ。・・・貴様が怒るのも無理は無いが、これは私と彼の契りだ。貴様が口を挟んでいい問題ではない」
「・・・承知、致しました・・・」

 言葉の怒気を治めながらも男らは恨みがましい気持ちが篭った視線を忘れなかった。イル=フードが慧卓らに向かって言う。

「測量の続きをしてもいいぞ、ケイタク殿」
「いえ、実を言うと只今全ての作業が終わりました所で御座います」
「そうか・・・」
「次回は、より正確な地図をお渡しいただけたら、我等は争い無き安寧の下に活動が出来るでしょう。どうぞ、御心に留めていただければ幸いです」
「ああ。必ずそうしようぞ」
「・・・行くよ、リコ」
「は、はい・・・」

 慧卓はするりと背を向けて彼らが駐在する居住地へと足を運んでいく。

「人間風情が・・・調子に乗って」
「ちっ」

 背後から呟かれたあからさまな挑発と舌打ちに臆し、そして苛立ちながらも、自らの正しさを伝えるように慧卓は厳しき瞳を向けた。売りたくも無い喧嘩を売らないと当分は身の保障も出来なさそうだと思いながら視線を戻そうとして、一瞬びくりとしたものを感じて、一棟の民家に目をつけて立ち止まる。
 民家の入り口に掛けられた幕の内から、見知った銀光が放たれているのが見えた気がしたのだ。剣の煌きというか、穏やかではない光が。
 慧卓は逡巡の後、思い切った様子でその建物へと近寄っていく。リコが訝しげに彼を見遣る。

「け、ケイタクさんっ?」
「き、貴様っ!!!その建物に近付くな!!!!」

 男らが先程以上の苛烈さをもって言を発す。慧卓がそれを無視して建物に近付こうとすると、行く手をイルが身をもって塞いだ。

「待て。何故其処に?」
「・・・今、この幕が揺れた時、抜き身の剣のようなものが見えました。即ち誰かが抜刀しているという事実。放置しておくには余りに危険です」
「其処から離れろといっているっ、貴様!!そこは貴様が近付いて良いような場所ではない!そこは巫女殿の御住まいぞ!」
「・・・衛兵が現下の状況を見過ごす御積りか?貴方々が敬愛する巫女殿の家屋で、野蛮な白刃が抜かれているやもしれんのだぞ」

 男らが次の文句を浮かべようと逡巡する間に慧卓は更に近付こうとするが、イル=フードの言葉に足を止めざるを得なかった。

「ケイタク殿。貴殿は一つ、我等が巫女殿
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