暁 〜小説投稿サイト〜
不可能男との約束
魔女の意気
[10/15]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
デス》を描いている」

「……ストーカーレベルね」

皮肉を言っても、本から目を離さない。
だけど、言われた内容に関しては、驚きを禁じ得ない。
自分の書いた同人の、自分が求めている物をすべて捉えているし、それに何よりも───黒髪翼というペンネームは小等部の時にしか使った事がないペンネームである。
達が悪いストーカーね、ともう一度頭の中で繰り返して、汗が足れ流れる。忘れていなかったが、今は荷重のせいでかなり体に負担がかかっているのである。
もう、足がかなりがくがくしているが、隠す余裕もない。

「ああ」

まだ何か言いたいことがあるの? と思った所に、シェイクスピアはただ、端的に一言だけ告げてきた。

「君がパートナーと自分をモデルとした完成形を書き上げる事を、僕は祈ってるよ」

「───」

今度こそ、呆然とした。
誰にも言っていなかったぼんやりとした目標であった。
梅組には勿論の事、マルゴットにも言っていなかった密かで、ささやかな計画であった。
別に隠すほど壮大なものではない。
ただ、単純に自分が満足にできるものを描けるようになったら、サプライズにして、でも、それを二人で笑いあおうという単純で、小さな───でも、目標とした物であった。
見透かされたという思いがある。
赤の他人にばらされたという思いもある。
そんな感情ばかりが生まれていくが、感情とは別の思考が頭の中でこの状況を分析する。
これは、攻撃だ。
相手を揺るがす言葉を持って生まれる動揺で、こちらの動きと思考を阻害する攻撃だ、と。
シェイクスピア自身は狙ってやったのか、ただ、思った事を言っただけなのかは知らないが、これは揺るがすための一撃だ。
そこにダッドリーが苦い顔で割り込んできた。表情から察すると、英国も一枚岩な国ではないという事なのだろう。

「ははは話は終わりよね? じゃあ、武蔵の総長連合及びに生徒会に命令するわ」

誰が……! と言いたいところだが、ぐっと我慢する。
ここで、不用意な一言を放って、それが切っ掛けに攻撃が始まったら、勝つのは難しい、と普通に計算が出来たからである。
だが

「ここここれ以降───武蔵は英国の管理下に置かれることを了承しなさい」

ふざけた事をと言う言葉しか思い浮かばない一言に、冷静になれと言う言葉がすべて消滅する。
そして、何かを言おうと、息を吸い、言葉を放つ初動を見せた所で、ダッドリーの聖譜顕装によって、制御を奪われた武器が音を鳴らす。
その音によって、冷水を浴びせられた気分を体感することになり

……くそっ。

どうにかしたいが、どうにかする状況ではないという事が、更に苛立たせるのだが、状況はこちらの状態に構ってはくれず、そのままダッドリーは追い詰めるように言を放つ。

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ