女の意地
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行かれてしまう。
そんな単語だけが、ァの脳内に浮かび上がってきた。
そして、反発するかのように出てきた単語はただ口の中から発せられた。
「行かせません……!」
莫大な物体が急激なスピードで生まれたエアポケットによって生まれた衝撃で、艦が揺れる中、ァのみが揺れずに、ただその言葉を吐いた。
房栄が管板上の人間は中央に集まれと指示をしているのが聞こえる。
最も揺れない場所は艦の中央であるという事であり、つまり、これからが本番であるという事を彼女は理解しているのであろう。
だけど、ァは敢えてその指示を聞いていない振りをして、前に進んだ。
その瞬間に武蔵は発進した。
轟音が炸裂した。
武蔵の巨大さが音を作り、真空を作り、霧を作りながら発進する。
巨大なのに、最早自分の足では間に合わない事に頭が勝手に理解して、足を止めさせようとするのを無理矢理動かしながら
「……!」
十字砲火の一斉掃射を放つ。
二つの砲から火を吐き、出された数は限界突破をして五つもの砲弾を吐き、それら全てが、武蔵に繋がれている輸送艦に向かう。
一発だけ、輸送艦をつないでいる牽引帯に食い込み、残りは輸送艦の故にいる敵軍に当たるはずだったのだが
「結べ───蜻蛉切!」
二発は蜻蛉切による割断により割られ、残り二発は見えない衝撃で斬られた。
剣神の剣圧による斬撃。
それを為したのは
「熱田・シュウ……!」
彼はこちらを一瞬だけ見た。
ある意味、言葉よりも雄弁に、しかし、シンプルにメッセージが伝わってきた。
足りてねえな、と。
その目に、思わずカッと気持ちが沸騰するのを感じたが、既にこの距離では何をやっても防がれるという事実を目の前で見ている。
つまり、この場での相対は既にもう終わっているという事を示している。
それは、ァも既に理解できている。
戦の終了を感じ取ることは、彼女にとって授業を終える時のベルを聞くのと同じような感慨と思っていたからである。
だが、今は違う。
何時も一緒であった夫の姿は今はなく、ただ一人で。
目の前に、しかし、離れている少年を前に自分は感情を抑えることが出来ずに、何かを言おうとして口を開けようとしたその刹那に。
直ぐに、武蔵は再加速をし、こちらとの距離を一気に離していった。
そして、最後の本当の刹那に。
剣神はこちらから視線を逸らした。
理由はないのかもしれない。ただ、もう戦闘が終わったと思い、周りの様子を見に行こうとしただけなのかもしれない。
しかし、捻くれてしまった自分にはそれが安い挑発に見えてしまい、何かを言おうとしていた口からは
「───!!」
意味のない叫びが放たれた。
しかし、それも全て武蔵の大気との衝突による水蒸気爆発によってかき消
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